「その一言に救われました」泣いているときに夫がかけてくれた言葉
2018年に他界した父が意識のあるうちに会ったのは、私もそれが最後になりました。生きているときに、もっと会いに行ってあげればよかったと悔やみましたが、やっぱりまだ、私1人で両親や姉と会うのは不安だったのです。思いはあっても、距離が必要な関係だと思うしかないですね。
10年前、空港で泣いている私に、夫が「でも慶子、今、あの2人は幸せそうにしていたじゃない。だから慶子はやるだけやったんだと思うよ。これが慶子とご両親なりの関係なのだから、大丈夫だよ」と声をかけてくれて。その一言に救われました。
――現在は、お母さんとはどのような関わり方をされているのでしょうか。
小島 新型コロナウイルスの流行もあり、頻繁に会うのは難しいので、電話が多いです。用があって電話をするときには、いつも「今が看取りだ」と思って話すようにしています。母は至って元気なのですが、いつも悔いのないようにと思っています。世間話で笑ったり、母の若い時の話を聞いたり、今はいい距離感です。
――小島さんが親子関係について公表されたことで、何か反響はありましたか。
小島 身近な人から「実は私も親子関係で悩んでいてね」なんて話を、本当に意外なほどたくさん聞くようになりました。メディアの方でも、取材時に「実はうちも母親といろいろあって」と言ってくださることもあります。私と私の家族が経験したような葛藤は、今もめずらしくないことなのかなと思います。
親と会って死にたくなるなら、会わないほうがいい
――家族と距離を置くことに対して、まだ日本においては理解が少なく「親不孝だ」と思われることも多いと思うのですが、そうした風潮について、どう思われますか。
小島 「親孝行とは何か」ということをシンプルに考えてみると、「もらった命を大切にする」ということだと思うんです。だから親と会って死にたくなるくらいだったら、会わないほうがいいこともあるんじゃないでしょうか。
家族の難しいところは、例えば親から虐待のような扱いを受けていたとしてもなお、親を憎みきれない、という部分だと思います。だからみなさん苦しむんだと思うんですね。さらに世間からの風当たりも強いとなればなおさら。
でも、家族って、何か1つの理屈や理由で、全部が説明できるものではない。どの家族も世界に1つの組み合わせですから、そこでどうやって生き延びるかは、人それぞれに答えがあっていいはずです。