ガイ・リッチー監督による今作は、これまでになかった斬新な戦争映画だ。

 2018年のアフガニスタンを舞台にしたこの映画の主人公は、米軍曹長ジョン(ジェイク・ギレンホール)と、米軍に雇われた通訳アーメッド(ダール・サリム)。2001年9月11日にニューヨークで同時多発テロが起き、初めてアフガニスタンに米軍が送り込まれて以来、現地では、アメリカに移住する特別のビザを発行してもらえることを条件に、5万人のアフガニスタン人が米軍の通訳を務めてきた。この映画は、これまで見逃されてきたその部分に脚光を当てるもの。ストーリーはスリル満点で、まるで予測がつかず、半分過ぎた頃には最初に思っていたのとまるで違う映画になり、最後は深く考えさせる。

タリバンの追手を避けるため、アーメッドは瀕死のキンリーを荷車に乗せ、山中の過酷な逃避行を開始。一人で逃げることもできたが、アーメッドはそれを良しとしなかった ©2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

“リッチー流”にとまどいながらの撮影開始

 そんな今作は、製作の裏側も普通と違っていた。少なくとも、リッチーと組むのが初めてのギレンホールとサリムにとっては新しい体験だった。撮影当日にもせりふを変更するリッチーのやり方にとまどう俳優は少なくなく、サリムも「最初の2日ほどは慣れなかった」と認めるが、リズムがわかってくると、彼との仕事は刺激的だったとふたりは揃って言う。

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「僕は以前からガイ・リッチーのファンだ。15年以上前からの知り合いでもあるし、いつか一緒に仕事をしたいと思ってきたんだよ。そこへ、このプロジェクトが訪れた。最初にあったのは、60ページほどの脚本だった。ちゃんとした脚本というよりも、せりふが書かれているかと思ったら次にシーンの説明があり、『ジョンとアーメッドが口論をする』などと書かれていたりするものだ。だけど、それを読んだだけでも、どんな話を語ろうとしているのかは伝わってきた。そこから始まって、ストーリーは何度も形を変えていったよ。そしてついに今のバージョンになった時、僕は『これだ!』と思ったね。とは言っても、そこからもまだ変わり続けたけどね。毎日、撮影前にシーンの書き直しをしたし、一緒に食事をしながら新たなアイデアを出し合ったりもした。撮影が半分終わった頃に良い発見があり、また戻ってやり直したりもしている。脚本がそのまま映画になったわけではないんだ」(ギレンホール)

ジョン・キンリー曹長を演じたジェイク・ギレンホール ©2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED