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 当然、就寝時間は寝ることとトイレに行くこと以外は許されていないので、本を読んでいるところが見つかると、罰則の対象になる。規則を破る受刑者は絶えることはなかった。

反省して看護師を目指す元半グレも…

 ここまで刑務所の悪い実態を綴ってきたが、刑務所に収監されている受刑者が全てそのような受刑者ばかりではない。懲役刑を科され猛省し出所後の未来のために日々の時間を大切にする受刑者もたくさん見てきた。税理士、中小企業診断士、弁護士を目指すものもいた。その中で私が一番印象に残っている受刑者がいる。

 元半グレで高校中退、全身刺青の20代前半の男の子はその見た目からは全く想像がつかないほど優しい口調でこんなことを私に話してくれた。

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「出所したら大学へ入りその後看護師を目指します。今は大学の過去問をひたすら勉強しています。英語なんで全然わからなかったんですけど、ずっと勉強していたら凄く楽しくなって。英英辞典で単語調べたりするの凄く面白いですよ」と笑顔で語る。

写真はイメージ ©getty

 なぜそこまで変わることができたのかを聞くと、彼はこんな風に語ってくれた。

「自分は詐欺で捕まったんですが、接見禁止が取れて警察署の面会室で両親に会った時、初めて両親の泣き崩れる姿を見たんです。その時に自分はなんて親不孝なことをしたんだろうって……心底感じてしまって泣いてしまいました。そこから親のためにも自分は変わらなくちゃいけない。このままじゃまた再犯してしまう。自分に何ができるのかを必死に考えました。真面目に生きて人の役に立ちたいって思えるようになって……それがダイレクトに感じられる仕事が看護師だったんです」

 素晴らしいなと思った。この子から刺激をもらったことへ心から感謝した。