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恋愛でやってはいけない「経営の失敗」とは…あなたが「普通の人でいいのに」出会えないワケ

『世界は経営でできている』#1

2024/02/21

genre : ビジネス, 社会

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 その彼氏はというと、さっそく自立もへったくれもないような、物理的・精神的・社会的・経済的にすなわち総花的に「よく転ぶ、転倒する」新しい彼女をどこからか見つけてきて、「この子は俺がいないとダメなんだ」などと嘯くのである。

 これは「目的と手段の転倒による経営の失敗」の例として理解できるだろう。

 さらに二人の関係に亀裂を入れるさまざまな問題を乗り越えていったとしても別の災難がやってくる。

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 たとえば、相手の要求に合わせて物わかりのいい男/女や都合のいい男/女を演じていたら、だんだんと相手が寄生虫型・ヒモ型の我儘放題の怪物に育っていったりする。こうなってしまっては相手からの「ずっと一緒にいようね(迫真)」の一言も、もはやホラー映画のセリフとしか思えなくなってくる。

 これらの欠点がない、まさに理想の伴侶を見つけたとしても、「相手に結婚を意識してもらうためにタイムリミットを相手に伝えよう」とのファッション誌の記事を鵜吞みにして、「30歳までに結婚しないなら別れる」と宣言した瞬間に「重すぎる」と別れを告げられたりする。

 ならば婚活だ、と、マッチングアプリやマッチングイベントに参加しても、あまりの選択肢の多さにかえって他人の悪いところしか見られなくなってしまう。かといって恋愛はもう面倒だ、とばかりに、一緒にいても違和感しか覚えないが表面的なスペック(性能)が無難な好きでもない相手と結婚するという「大学入学時のはじめてのパソコン選び」のような結婚をして結婚生活が地獄になったりもする。

 これら3つは「短期志向と近視眼による経営の失敗」として説明できるだろう。

 このように理想の相手と出会えること、その相手との恋愛が成就することは、ほとんど奇跡といってよい。考えてみれば数理的・確率論的にいってもこれは当たり前だ。このことを理解するために巷でよく耳にする「普通の人でいいのに、出会いがなくて……」という悩みを分析してみよう。

©AFLO

 以下は少し数学っぽい話になるが細かい数式は追わずにざっくりと流し読みしていただければ大丈夫である(そうでないと私の計算間違いが露呈するので困る)。

 まず誰しも恋愛において重要視する要素を持っている。ネット上にあふれる婚活体験談・恋愛体験談を総合すると、性格、話の面白さ、収入、顔、体形、ファッションセンス、趣味、金遣い、家事への積極性、マザコンかどうか……などなどだろう。

 これらの要素はそれぞれ独立だとする。このとき「ある人物が、(正規分布に従う、十分大きな母集団を構成する)ひとつの要素において、平均以上の性能を発揮できる確率」は、上位半分に入る確率と等しいから当然2分の1だ。