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 次に「当該人物が、先ほどの要素に加えて、別のひとつの要素において平均以上の性能を発揮できる確率」は2分の1×2分の1である。こうして計算すると先ほどの十の要素すべてで平均以上の性能を発揮する人物は1024人に一人しかいない。

 このように、恋愛において普通の人と出会えない理由は「ある人が自分にとっての普通の人である確率=『2の自分がこだわる要素数乗』分の1」だからである。たとえば、10個のこだわり要素があるなら1024分の1(約1000人に1人)、こだわり要素が20個なら1048576分の1(約100万人に1人)しか「普通の人」は存在しない。

 さらに難しいことに、仮にこうした「激レア普通人材」に出会えたとしてもそこに「相手が自分を好きになってくれる確率」を掛け算しなければいけない。

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恋愛胸算用:マッチングとクリエイティブの恋愛論

 相手が浮気な人でない場合に相手が自分を選ぶ確率=1÷相手に言い寄ってくる人の数と仮定しよう。激レア普通人材は普通人材と見せかけて競争率も高いため、そうした相手と恋愛関係になれる確率は相当低いわけだ。

 もちろん数学に強い方は直感的にこの事実に気が付いておられただろう。肝心なのは、問題を提示するだけでなくこの問題にどう対処するかを示すことである。そしてこの問題を解決する方法は確実にある。

 それは有限の恋愛対象を奪い合うのではなく無限に恋愛対象を創り出すことだ。

 具体的には、第一に恋愛をあくまでマッチングだと捉えた上での対処法がありうる。第二にそもそもマッチングとしての恋愛からクリエイティブとしての恋愛に脱皮する対処法もある。

 最初の方法について。すでに確認した通り、恋愛の初期にさまざまなこだわり要素で相手をふるいにかけていく場合、こだわり要素の数が増えるごとに恋愛対象者は劇的に少なくなる。恋愛対象者は2のN乗人(N=こだわり要素数)に一人しかいないためだ。しかし、このことは逆に言えば「誰もがこだわるような要素を気にしなければ一挙に競争率が下がる」ということをも示している。

 そこで「恋愛において、自分が相手に絶対に妥協できない要素を挙げたら、その代わりに、誰もがドン引きするようなダメ要素を同じ数だけ受け入れる」という簡便な解決法がありうる。

 なんてことはない。美男美女で、性格がよくて、浮気をしないという要素を挙げるなら、元気なのに全然働かず、百貫デブで、足が生物兵器レベルで臭いくらいは受け入れるべきだということだ。

 どうしても百貫デブが嫌ならば、「会話の中身が最近視たユーチューバーに対する悪口だけで9割5分を占める」などの欠点は受け入れるべきだろう。これは相当な欠陥だから、競争率は劇的に下がること間違いなしである。