コロナ禍について、本当はまだ影響が続いているのにもかかわらず、世の中でほとんど話題になることはなくなり、オフィス街には会社員たちが戻り、賑わいを取り戻しているようにみえる。この3年、オフィスビルは閑古鳥が啼き、オフィス不要論まで取り沙汰されたが、そんな陰で苦しんだのがオフィスビルの地下などにある飲食店舗だ。

かつてはランチ需要、居酒屋需要があった

 オフィスビル内飲食店は、そのビルおよび周辺の会社員たちのランチ需要、勤務終了後の居酒屋需要などで成り立ってきた。会社員の多くは週休2日。土日や祝日は、ビル内人口は極端に減ってしまうため、平日が勝負となる。多くの会社は昼休みの時間帯が基本的に12時から13時頃に決められているので、前後をあわせても昼は2時間程度の間に売上を稼がなければならない。回転も命だ。メニューの注文を受けて5分以内には提供しないと、まず客が文句を言う。会社員は自分の仕事でのことはともかく、飲食については基本的には時間にうるさい傾向がある。中には朝の会議などで上司に叱られたうっ憤をはらすがごとく、店の従業員に悪態をつく客までいる。

 お昼休みの時間帯を目一杯同僚との会話に費やそうとする客も困った存在になる。食べ終わったら早々に会計をしてくれないと、短い勝負タイムで必要な回転率を実現できないからだ。

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写真はイメージ ©AFLO

 価格帯にも頭を悩ます。長く会社員相手のランチには1000円の壁があった。最近は相次ぐ原材料費やエネルギーコストの値上がりで1000円を上回るメニューも増えつつあるが、早く会社が従業員に対する賃上げを行ってくれない限り、値上げにも限度がある。

 夜は勤務を終えた上司と部下がちょっと地下の居酒屋で一杯という需要だ。こうした光景は昭和から平成初期くらいまではごく一般的なもので、自分たちが勤務したビルの地下飲食店を懐かしく思うリタイアメント層も多くいることだろう。ただし、多くのオフィスビルでは建物管理の都合で、飲食店の深夜営業は難しく、多くが夜10時までの閉店を厳守させられる。したがってラストオーダーはだいたい9時頃までとなり、あとは繁華街にでも行ってくれ、となる。

 こんなオフィスビル内飲食店にとって、コロナ禍による行動制限があった3年間が非常に辛い日々だったことは想像に難くない。実際、ビルオーナーから家賃免除や減額などの支援を受けた飲食店も多く、またこの機会に高齢オーナーの店などは閉店を余儀なくされたケースも少なくない。

 さて、一応はコロナ禍が明けたとされる現在、オフィスビル内飲食店には客が戻り、復活を遂げたのだろうか。