文春オンライン

「つながりやすくなりますか?」三木谷浩史会長が”楽天危機説”に答えた モバイル事業が大赤字、有利子負債は1兆8000億円

2024/05/03
note

 三木谷 正直に言うと、先行の3社が持っているプラチナバンドと呼ばれる周波数帯域は障害物があってもそれを回り込んで進む性質があるのですが、我々が国から割り当てられた1.7GHzにはその性質がなく、屋内や繁華街、高層ビルなどでつながりにくい場合がありました。

 また、我々はこれまでもKDDIさんとローミング契約を結んでいたのですが、東京・大阪・名古屋の繁華街などが対象地域に含まれていませんでした。しかも、我々自身の電波は「データ使用量無制限」でしたが、KDDIさんから借りる電波についてはデータの使用量制限があり、一定量に達すると通信速度が落ちる仕組みになっていました。

 KDDIさんとの新たなローミング契約では東名阪の繁華街でもKDDIさんのプラチナバンドが使えるようになり、しかもデータの使用量制限をなくしました。

ADVERTISEMENT

 ――そのタイミングが遅れたと。

 三木谷 技術的な問題があって、KDDIさんの電波を全国で使えるようになるタイミングが10月末以降になってしまったのです。それで「なんだ、まだつながりにくいじゃないか」と、「Rakuten最強プラン」を5月に発表した直後に期待して加入してもらったお客さんを落胆させてしまいました。

ローミング費用は軽くなった

 ――今後、つながりやすくなりますか。

 三木谷 多くの地域では、すでに「つながりやすくなった」と実感してもらっていると思います。それが解約率の低下に現れていると理解しています。

 ――ただKDDIに支払う巨額のローミング費用が楽天モバイルの赤字の原因にもなっている。従来は自前のネットワークを充実させてローミングの固定費を下げ、黒字化を目指す方針でした。ローミングを続けていたのでは、黒字化の時期が遠のくのではありませんか。

 三木谷 そこは守秘義務があるので、言えない部分もあります。ただ、最初のローミング契約は我々、楽天モバイルの基地局のカバー率がまだ全然、足りなくて、KDDIさんの回線を借りなければ全国でのサービスが提供できない状況で結びました。今は自前のネットワーク・カバー率が約99%です。残りの1%については、設備投資を頑張って自力でやるか、KDDIさんの回線を借りて設備投資のペースを少し緩めるか、という選択肢がありました。そういう状況下での契約ですから、最初の契約とは条件が違います。我々の費用負担がかなり軽くなっているのは事実です。

 ――ただ今回、割り当てられたプラチナバンドは3MHz幅が2つで、先行3社が割り当てられているプラチナバンドは15MHz幅と10MHz幅が2本ずつ。3MHz幅2本ではいかにも狭く見えます。