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 三木谷 プラチナバンドは帯域の広さより、遮蔽物があってもつながりやすいという電波の性質が重要です。我々がすでに割り当てられている1.7GHzの帯域は高速大容量の通信に適していますが、直進性が強くて建物の奥や地下に届きにくい。今回割り当てられた2つの帯域でその部分をカバーできるので、楽天モバイルの通信品質は確実に上がると思います。

強みは「完全仮想化技術」

 ――つながりやすさが互角になれば、データ使用量無制限だと月額7000円を超える3社に対し、無制限で3278円(税込)の楽天モバイルはコストパフォーマンスの良さで優位に立ちます。しかし、他社の半額という価格設定が「採算割れではないか」という指摘もあります。

 三木谷 そこで我々が世界で初めて商用化した「完全仮想化技術」が威力を発揮します。携帯電話の機能をソフトウエアに置き換え、高価な専用の通信機器を使わず、汎用サーバーでネットワークを構築するので、設備投資は既存ネットワークより3割安い。運用コストは4割安くなります。

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 実は先日、システムトラブルがあり、一部の地域で楽天モバイルがつながりにくくなったのですが、ソフトウエアの修正で対応し、4分で復旧しました。既存のネットワークなら半日とか1日かかったかもしれません。新しい機能を追加するときも既存のネットワークは専用の通信機器をリプレイスしなければなりませんが、仮想化のネットワークはソフトウエアのバージョンアップで済むので素早く安価に対応できます。

 ――携帯電話の場合、離島や山間部が対象になる最後の1、2%の人口カバー率を上げる時に、莫大な設備投資がかかると言われます。新たに獲得したプラチナバンドに対応するために再び、借金が増える心配はありませんか。

 三木谷 設計上、いま構築しているネットワークは1300万件のキャパシティを確保しています。それ以上になった時にはサーバーを増やす必要がありますが、全国に基地局を建ててきたこれまでに比べれば投資額はそれほど大きくなりません。最後の1、2%については、当面、KDDIさんの電波が使えますし、将来は我々が出資している米ASTスペースモバイルの衛星モバイルが使えるようになるはずです。文字通り宇宙から電波を降らせるので、どんな山の中でも電波が届きます。

 基地局がいらないという点で、イーロン・マスクの「スターリンク」より優れており、衛星のアンテナをその地域に向けるだけで、すぐに携帯電話がつながります。残念ながら今回の能登半島地震には間に合いませんでしたが、準備が整えば、大規模な災害の時に大きな威力を発揮すると考えています。

本記事の全文は「文藝春秋」2024年3月号と、「文藝春秋 電子版」に掲載されています(「危機説 楽天・三木谷会長 反省の弁」)。