知られざる300億円の減額
電気も水道もないなか、パビリオン建設を進めなければならないのも、計画が逆転したせいだろう。ここへ来て、会場の建設費膨張も問題になっている。大阪誘致が決定した2018年11月時点の1250億円が、2020年12月に「最大で1850億円」、昨年10月になって2350億円に膨らんだ。1.9倍になったと騒いでいるのだが、実は当初の1250億円の見積もり自体がかなり怪しいのである。
大阪府の万博基本構想検討会議における初回会議の議事録を捲ると、事務局の発言がこう記されている。
「事業費につきましては、愛知万博の例などを参考に、会場建設費は1500〜1600億円程度、運営費は800億円程度と試算しております。運営費は、原則入場料等で賄うものと想定しております」
これが16年6月30日のことだ。そこからわずか3カ月後の9月29日の同じ検討会議で、建設費を1200億円から1300億円と見積もっている。なぜ3カ月の間に300億円もコストカットできたのか。大阪府・市の万博推進局に尋ねると、計画面積の縮小などを理由にするが、検討会議では誰もそこを議論せず、関西経済同友会事務局長が辛うじてこう突っ込んでいるだけだ。
〈今まで、どなたも経費についての話をしていないので。(中略)これはこれで大変結構なことなんですけど〉
先の橋爪はこう指摘する。
「建設費削減の根拠について、詳細に議論された記憶はありません。検討会議の席で話題に出た誘致案の当初予算は、詳細がわからない段階ですので、さまざまな事業費を仮定のうえに積みあげました。大阪の財界や議会、国民の賛同を得るための概算のシーリングに過ぎません。その後、博覧会協会が精査して基本計画を立案した段階で、実施案でどのような予算になるのかは、見えていたと思われます」
万博会場の建設費用は国と大阪府市、関西の財界で、3分の1ずつ応分に負担することになる。財界から1600億円もの建設費に不満の声があがったため、慌てて見積もりを下げたという説もある。
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本記事の全文は、『文藝春秋』2024年3月号と『文藝春秋 電子版』に掲載されています(「大阪万博のデタラメ発注を暴く」)。