「マハラジャマック」の中身は?
パティに使われているのはチキンである。それをレタスや玉ねぎ、トマト、ピクルス、チーズと合わせ、二層にしたものが上下からバンズではさまれている。ソースはサウザンドアイランドドレッシングを思わせる味わいだ。
インドのマクドナルドは「バターチキンバーガー」や「バターパニール・グリルバーガー」など、他国ではなかなかお目にかかれない独自メニューを展開している。外国チェーンのローカリゼーションという観点で、非常に際立った特徴がある国と言えるだろう。
なお、ビーフを他の肉で代用するスタイルは他の外国チェーンも踏襲しており、インドのバーガーキングにもやはりビーフのハンバーガーはない。同チェーンの名物「ワッパー」バーガーも、チキン、さらにはマトンを使ったものまである。
その点、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の場合、当然ながら肉はチキンだけなので、この問題からは解放されている。
「フライドポテトに牛脂が使われている」
インドでは、牛肉をめぐる問題は単に食の嗜好にかかわるものではなく、宗教に深く根差している。対応を誤れば社会問題に発展しかねない危険性すらはらんでいる。それだけに、インドに参入する外国チェーンとしては、慎重を期す必要がある。
こうした事情をしっかりと踏まえてマクドナルドはビッグマックの代わりにマハラジャマックを導入するなどの対応を取ったわけだが、それで一安心というわけにはいかなかった。ハンバーガー以外のところでケチがついたのだ。
2001年に、ヒンドゥー・ナショナリズムを掲げる保守政党「シヴ・セーナー」のデリー支部長が、マクドナルドではフライドポテトの揚げ油に牛脂が使われているとし、「ヒンドゥー教徒の宗教的感情に対する攻撃だ」と非難したことがあった。「ヴィシュワ・ヒンドゥー・パリシャード(VHP)」というヒンドゥー教徒団体の幹部もこれに同調した。
シヴ・セーナーは商都ムンバイを擁するマハーラーシュトラ州の有力地域政党で、当時は中央でもインド人民党(BJP)主導の連立政権に参加していた。VHPは、「民族義勇団(RSS)」を中核とするヒンドゥー至上主義グループの一角を占め、過去には過激な行動を起こしたこともあった。
マクドナルド側は「牛肉製品は使っていない」と明確に述べて疑惑を否定し、騒ぎは鎮静化したものの、この問題がいかにセンシティブかを思い知らされたことだろう。