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上がり続けている国民負担率が一気に下がることはない

岸田首相は昨年秋の国会審議では、「実質的な追加負担は生じさせない」とする「負担」の指標を、国民所得に対する税や社会保障の負担割合を表す「国民負担率」で測ることを明らかにしていた。

2月9日に財務省が発表した国民負担率は、2022年度の実績で48.4%と過去最高を更新した。2023年度は46.1%に急低下する見込みを発表しているが、これはまったく当てにならない。1年前に2022年度の見込みを発表した際には47.5%と前の年度の48.1%を下回るとしていたのだが、結局蓋を開けてみれば48.4%とさらに負担は高まった。

2024年度は45.1%まで下がるという予想を出しているが、この十数年、財務省は毎年のように負担率は下がるという予想を出しながら、結局は毎年、負担率は最高を更新してきた。一度として予想通りになったことはない代物なのだ。

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財務省は政府の経済成長予想などを機械的に当てはめて計算しているだけで、意図的に操作しているわけではないと言うが、政府の経済予測自体が常に過大になっているので、政府にとっては都合の良い予想数字が作れるということなのだ。まず当たることがない予想をベースに、「国民負担は下がります」と首相に言われても、まったく説得力がない。

上がり続けている国民負担率が一気に下がることはまずあり得ない。過去最高の国民負担率48.4%が、一気に46.1%に下がるという予想を平気で出し、それを前提に「負担が増えない」と言っていること自体、国民を欺いているとしか言いようがない。

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)
経済ジャーナリスト
千葉商科大学教授。1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。