それほど愛着のあるテントだったが、前述した通り、他人とは被らないテントが欲しくなった。
「それでアメニティドームをメルカリで売って、当時はまだ珍しかった『ogawa』(職人の技術力に定評のある日本の老舗アウトドアブランド)のテントを買ったんですけど、そのうちこれもキャンプ場で被るようになってしまいました。で、『ノルディスク』(デンマークのアウトドアブランド)なら被らないだろうと思ったら、これも持っている人が増えてきてまして、最終的に『ローベンス』(同じくデンマークのアウトドアブランド)に行き着きました」(タカさん)
誰がブームを終らせるのか?
もしかすると今回のスノーピークの大幅減益の背景には、コロナ禍におけるキャンプブーム初期にこぞってスノーピークのテントを購入してキャンプを始めた人たちが、キャンプ経験を重ねていく中でスノーピークから“卒業”し、タカさんのように自分なりのスタイルを模索する時期に入ったという事情もあるのかもしれない。
一方で「テント遍歴」を重ねてきたタカさんは、今、改めて思うことがあるという。
「これまで色んなテントを使ってきましたが、スノピのアメニティドームってやっぱりいいテントだったんだな、と。一度は手放しましたが、また買おうかな、と思っているところです」
そしてタカさんは最後にこう付け加えた。
「スノーピークの利益が落ちてキャンプブームが終焉するんじゃなくて、終わるとしたら、それを見て“キャンプ終わった”って騒いで拡散する人たちが、ブームを終わらせるんじゃないですかね。ただ本当にキャンプを愛する人にとっては、キャンプブームが盛り上がろうと終わろうと、どうでもいいというのが本音なような気がします。そういう人たちは、自分がスノピがいいと思えば、やっぱりスノピを買うんだと思います」
それがブームである限り、いずれ終わりは来るものだ。
だが例えば一般社団法人日本オートキャンプ協会が昨年7月に刊行した「オートキャンプ白書2023」によると、オートキャンプ参加人口こそ前年比86.7%の約650万人となったが、年間の平均キャンプ回数(5.4回)、平均宿泊日数(7.2泊)はむしろ過去最高となっている。
キャンプ好きをザワつかせたスノーピークの“ピークアウト”は、キャンプブームの「終焉」ではなく、むしろ「深化」を物語っているのかもしれない。