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 一方、『きれぎれのダイアリー』のプロモーション活動の一環として開催された「柴田聡子のきれぎれのトークショー」では、朗読パフォーマンスも披露された。柴田さん曰く、朗読には、普段のライブパフォーマンスのなかで披露する、“歌”とはまた異なる魅力があるという。

「朗読では自分でリズムをコントロールできるのが魅力的です。自由に、さまざまなリズムを試すことができるんです」と朗読における表現の自由度について熱く語る柴田さん。

 さらに、「以前、絵本雑誌『さがるまーた』のイベントで朗読をした際に感じたのですが、絵本では、絵を見ながらでないと伝わりにくいこともあります。それぞれの作品ごとに異なる朗読の醍醐味を味わうことができるのも、面白さかもしれません」と自身がテキストを手がけた絵本の朗読についても振り返った。

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鈴木七絵/文藝春秋

「きれぎれのトークショー」では、柴田さんが影響を受けた様々な作品についての話が展開された。同イベントで名前が上がったのは、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』や夏目漱石の『こころ』、萩原朔太郎の詩集、さらには『まど・みちお全詩集』といった日本文学の古典である。そこで今回は現代の作品に焦点を当てて、影響を受けた作品について再度たずねてみた。すると彼女は『叶恭子の心の格言 あなたの心にファビュラスな魔法を』や『IKKO 心の格言200』などの書籍にも触れつつ、特に蒼井優の写真集『トラベル・サンド』への深い愛情を明かした。

「蒼井優さんは昔から好きなのですが、『トラベル・サンド』が出た時は私の中で激震が走りました。いや、正しくは世界中にかもしれないですけど……(笑)。まずフォトグラファーの高橋ヨーコさんが撮るお写真が素晴らしいですし、蒼井さんの飾らない言葉の数々も印象に残っています。

 別の写真集だと『ダンデライオン』も好きです。シベリア鉄道で撮影された写真や、ロシアの食べ物の塩分で顔がむくんだ話、旅先で出会った人の話などが妙にリアルで。パーソナリティーを大事にする姿勢が、素直に生きている感じが伝わると言いますか。作り手の方々も、蒼井さんのそう言う部分を大切にすることを軸においているんだろうなと思える写真集なんです。知り合いのご飯屋さんに置かれたその写真集がボロボロになるまで読まれているのを見て、その魅力が多くの人に共感されていることを実感しました」

 小説、写真集、詩集……と幅広く影響を受けた本を述べる中で、柴田さんが最後に言及したのが辞書だ。

「白川静先生の『字通』も印象的に残っている本ですね。本、と言うよりは辞書なのですが、これは白川先生の研究の集大成と聞いています。辞典としてだけではなく、研究結果を読んでいるようでもあり、ときおり白川先生自身の視点とも言えるような描写が入っているところが面白いです。辞書に詳しい方からしたら、どうなんだろう?と感じられることもあるかもしれませんが、白川先生の“作品”としては最高です」

ユリイカ書き下ろしエッセイのテーマは「きっかけとなった瞬間」

 2024年2月27日には、ユリイカ2024年3月号「特集=柴田聡子」が発売された。柴田さんに縁の深い多彩な書き手たちからの寄稿がラインナップされており、まさに柴田さんの音楽キャリアと人生を網羅する象徴的な特集になることが期待されている。