たけしさんから「2年後にヤクザ映画を撮るんだよ。やらねえか?」
――たけしさんに映画出演を直訴されたのですか。
中野 一世風靡の頃に面識があったので、「お久しぶりです」と挨拶をしたら「あんちゃんのVシネ見てるよ」と。そんな感じで話をさせてもらっていて、撮影の終盤で「あんちゃんさあ、俺、2年後にヤクザ映画を撮るんだよ。やらねえか?」と言ってくれたので「やります!!!」って。
すでに、そのタイミングで役についても聞かされてたんです。「本筋とは関係なく、サイドで俺を恨んでる役なんだよ。で、最後の最後、俺を刑務所の中で刺すんだよ」とか教えてもらっていて。
「この後に1本撮るのがあってさ。それが終わって、準備ができたら連絡するから」と言われたけど、2年経っても連絡が来ないんですよ。
――忘れられてしまった?
中野 僕のマネージャーに「もう2年経つんだけど」と話したら、人を介して聞いてくれたんですよ。すると、その前日か当日にキャスティング会議をやっていて「あの役、中野さんで決まってます」と返事が来ました。でも、詳しい話を聞くと、やっぱり忘れてたみたいです(笑)。あちらのマネージャーがたけしさんに確認したら「ああ、そういや中野君に話してたわ」と思い出してくれたそうです。
撮影現場は「どこも手を抜かねぇぞ」といった雰囲気
――たけしさんの現場は、やはり他とは違いましたか。
中野 スタッフの数とか、規模の大きさにも圧倒されましたね。たけしさんの撮り方も、新鮮というか。噂では聞いてたんです。演出をあまりしないとか、テストのときからカメラを回してるとか、リハーサルから本気っていうね。「どこも手を抜かねぇぞ」といった雰囲気なんですよ。
――カッターナイフで指詰めからの顔面を切りつけられた時の緊張感は、凄まじいですよね。
中野 僕、あそこがファースト・シーンだったんですよ。現場は神戸だったんですけど、初日にあのシーンの撮影で。でも、現場の空気感は出来上がっていたので、僕もイッちゃってましたね。