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「活躍している俳優を一瞬にして殺すのが北野映画の醍醐味だな」

――中野さんが演じる木村は『ビヨンド』で殺されますが、「ひょっとしたら実は死んでおらず、3本目で登場する」といった期待は抱きませんでしたか。

中野 たけしさんの脚本なので、たけしさん次第ですけど、僕とマネージャーには「目を開けて死んだら3はない」っていう考えをめぐって葛藤がありました。現場でマネージャーが「目をつぶって死んで」というんですよ。「なんで?」と聞いたら、「目をつぶっていたら、死んでるかどうかわからない」と。

 

 で、たけしさんがモニターを覗いて、スタッフとああだこうだやってる姿を見て、「北野映画の醍醐味ってなんだろう」と10分ほど考えたんです。で、「活躍している俳優を一瞬にして殺すのが北野映画の醍醐味だな」と悟って。そりゃあ3、4と続くなら出たいけど、北野映画の真髄に逆らうわけじゃないですか。だから、目を開けて死んでいきました。

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僕は父親というより、ファンとして太賀を見てます

――せっかくの機会なので太賀さんのお話も聞きたいのですが、やはり父の影響で俳優になったと思われますか?

中野 僕がどうこうって感じではないですね。僕の出たものを見てないし、『アウトレイジ』は北野映画だから見ていたっぽいし。

 太賀は写真を撮るのが好きで、カメラに興味を持つと写真か映画のどちらかに行くじゃないですか。太賀は映画のほうに行ったと。つまらなくて、すみません(笑)。変わった子で、家族で食事してる最中に「スターダスト入ったから」とか言い出したりね。自分で勝手に決めて、勝手に進んでいくんです。僕は父親というより、ファンとして太賀を見てますから。

 

――最も距離が近いファンとして、太賀さんをどうご覧になっていますか。

中野 仕草や芝居が僕と似ているなんて言われるけど、まったく似てるとは思わない。自分の息子を褒めるみたいで嫌だけど、僕なんかとはレベルが違う。芝居をするために必要な、中に入っていく作業ってありますよね。その深さが違います。

――石井裕也監督の『愛にイナズマ』(2023年)では、直接的共演ではないものの1本の映画に親子で出演しました。いずれ、直接的な共演の企画も舞い込むと思いますが。

中野 それはもう太賀とやらせてくれるなら、どんな内容でも受けます。僕も今年で60になるので。受けておかないと、いつ死んじゃうかわからないから(笑)。

写真=山元茂樹/文藝春秋