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先輩からいきなり「お前ら、暇だから今から戦え」と言われる

――養護施設で暮らしていた子どもたちとの関係はどうでしたか。

古原 先輩は怖かったです。みんなで遊んでいたら、いきなり「お前ら、暇だから今から戦え」とか言われて。言うことを聞かなければ先輩からボコボコにされるので、どんなに嫌でも友だち同士で殴り合わないといけないんですよね。

 あとは、エアガンが流行っていた時期だったので、何かあると先輩は僕らを撃つんですよ。少し物音を立てただけで「うるせえ」と撃たれたり、「水を飲む仕草が気に入らねえ」と言われて撃たれたり。「お前、さっき勝手にトイレに行ったな」と言われて撃たれたときは「もう何やっても終わりじゃん」と思いました。

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――エアガンって、実際に当てられると、想像しているよりもずっと痛いですよね。

古原 そうなんですよ。僕、鎖骨あたりに3つの跡が残ってて。なんかほんとに、当時はやるかやられるかという環境で。

鎖骨あたりにはエアガンの弾の跡が残っているという

 食事のときには、力のある先輩がみんな持って行ってしまうから、小学生の頃はお肉を食べられなかったんです。代わりにみんなが食べたくない野菜が僕たちのところに集まってきて、ベジタリアンのような生活をしていました。

 でも、僕が退所したあとに環境が少しずつ良くなり、そういった文化は徐々になくなっていったみたいです。

施設で育ってよかったこと

――古原さんがいた当時の施設は、まだ環境が整っていなかったのですね。

古原 勘違いしてほしくないのは、ほかの施設も同じような環境というわけではありません。僕の知っている児童養護施設出身者は、アットホームな施設で育った人たちばかりです。

 ただ僕の場合は、小学6年生くらいまではかなり悲惨というか、本当にいい思い出がなくって。

 

――そうすると中学生以降、何か環境に変化があったのでしょうか。

古原 その頃には、僕自身がなんとか生き抜くすべを身に付けられて、人のことを見る力が養われてきたと思うんです。それは施設で育ってよかったことだと思っています。ずっと厳しい環境で育つと「自分に対してこの人がどう思っているのか」をすごく敏感に感じられるようになる。

 だから、いつも先回りして「この人は俺のことを嫌いになるだろうから、嫌われる前に離れよう」とか、少しずる賢くなったりして。気が付いたらそういう処世術のようなものを自然と身につけていました。

撮影=深野未季/文藝春秋

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