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ついに福岡で「トンコツ系」が少数派に転落…業界を震撼させる「豚骨ラーメン離れ」の3つの理由

source : 提携メディア

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福岡で生まれ育ち、今も福岡で商売を営む女性(38歳)は「豚骨ラーメンを食べたいときは『ここに行く』と決めている店がある」と話す。同様に生粋の福岡人である男性(59歳)も「新規開拓はせず、決まった店に行く」と言う。

いずれも幼少期から慣れ親しんできた豚骨ラーメン店ではないが、大人になり味覚が形成されていくうちに出会った、自分好みの豚骨ラーメンを提供する店だという。他にも数人の福岡人に聞いたが、同様の答えが返ってきた。

新規出店者にとっては、ライバル店と競うのも、元々そこへ通う人々を自店へ引きつけるのも、難易度が高い。

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他のラーメンよりも高コスト

2つ目は豚骨ラーメンの製造コストは一般的に非豚骨ラーメンよりも高い点である。

店によって使う豚骨の量は異なるが、たとえば鶏ガラで出汁をとる醤油ラーメンよりも、豚骨ラーメンの方が高コストになると山路さんは言う。

鶏ガラは弱火かつ短時間、少量の骨で出汁がとれるが、豚骨は強火かつ長時間(24時間炊き続ける店も存在する)大量の骨を煮立てないと出汁がとれない。光熱費(ガス代)や人件費、材料費、事業系ゴミ袋代などの処理費などをトータルで考えると、豚骨の方が、支出は大きいのだ。

コスト事情については、福岡市博多区に3店舗を展開する「博多一双」創業者で、EVORISE社長の山田晶仁さんに聞いた。

博多一双では24時間炊きっぱなしではないが、営業中は3つの寸胴鍋に入ったスープを強い火力で炊き続けている。国産の子豚の頭骨、背骨、げんこつを下処理し、高い火力で骨がホロホロになるまで3つの寸胴を使って長時間炊き上げ、「呼び戻し(※)」という技法でスープを作っている。

※創業当時から空にしない寸胴があり、毎日その寸胴に別の寸胴でとった新しいスープを少しずつ継ぎ足しながら作る「呼び戻し」という技法。その日必要な分量のスープを1から作る技法「取りきり」よりも高コスト