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ついに福岡で「トンコツ系」が少数派に転落…業界を震撼させる「豚骨ラーメン離れ」の3つの理由

source : 提携メディア

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原価率は他のラーメンよりも高い

厨房(ちゅうぼう)のガス台に目をやると、近くの水道から水が流れ続け、鍋底に4~5cm程度の水が溜まっている。なぜずっと水を流して、鍋の底を冷やしているのかと尋ねると「鍋の変形を防ぐためです」と山田さん。

高い熱効率を維持する設備が備わった特殊なガス台で、鍋を高火力で熱し続けていると、鍋が簡単に変形してしまうのだ。そのため、鍋を火にかける間は水も流しっぱなしになる。先に挙げた光熱費だけでなく、水道代の額も大きくなる。豚骨は非豚骨と比べて原価率が高い傾向にある、と山田さんは話す。

1杯500円から動かせない

3つ目は、価格を上げにくい点だ。

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豚骨ラーメンは「500~600円」程度といった安価なイメージが定着しているため、価格を上げると「高い」と客離れにつながりやすい。

福岡の豚骨ラーメンでは一般的に、1杯につき100gの細麺が使われる。対して東京や大阪など発祥の非豚骨ラーメンは1杯につき麺は130~140gで、麺も細麺とは限らない。福岡の豚骨ラーメンよりも1食のボリュームが多い。

値段は、通常のラーメンで800円~900円程度。中には1杯1000円を超えるラーメン店も多い。

「福岡の豚骨ラーメンは“一食”としてカウントされているというより、飲みにいった後の〆に食べるもの、または小腹が空いたときの『おやつ』として認識されてきたからこそ、安く食べられるものといった印象が根づいているのでは」と博多一双の山田さんは話す。

1950年代、博多漁港に面するエリア・福岡市中央区長浜で生まれた長浜ラーメンが、魚市場で働く人たちから「安価に、さっと食べられて、小腹を満たせる」と支持され、豚骨ラーメン=安いとのイメージが定着したようだ。

ちなみに長浜ラーメンも、茹で時間の短い細麺が使われ、麺の量も100gとされ、替え玉をする人も多い。

ただでさえ光熱費がかかり、原材料費も高騰している。さらに、ラーメンの好みが多様化する中では、福岡で豚骨専門店を出しても利益がでにくい。それでも値段を上げることができない。