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負けん気が強く、江角さんもライバルだと思っていた

ーーモデルだけでなく是枝裕和監督の初監督「幻の光」にも出演します。

吉野 オーディションを受けた時は13歳くらいだったと思います。

ーー是枝監督が当時の雑誌の記事で、自分のお気に入りの子として吉野さんを挙げていました。後に「ワンダフルライフ」でも是枝作品に出演されますが、監督の印象はどうでしたか。

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吉野 是枝監督にはすごくいい印象しかないです。私の役は江角マキコさん演じる主人公の少女時代だったんですけど、初めて会った時に江角さんが「わあ、私の子供の頃にそっくり」と言ってくださって。

 でも反抗期だったし、負けん気が強かったので江角さんもライバルだと思っていたんです。なので「全然似てません」と言って(笑)。江角さんにそこも「かわいい」と笑ってもらえたからいいんですけど、本当に生意気だったので。

©橋本篤/文藝春秋

 映画の始まりは私が演じる少女時代で、そこから江角さん演じる大人の役になるんです。なので是枝監督にも「私は大事な役ですよね! なので、もしよかったらセリフをもっと増やしてください!」と伝えました。映画のパンフレットにも「私のところは一番大切なシーンです」と答えていて。確かに本当に大事なシーンではあるんですけど、当時は何でも口に出して伝えていました。

笑顔の写真が少ないワケ

ーー是枝監督はそんな吉野さんの率直に言う部分がよかったと発言されてますね。

吉野 篠山さんの撮影でもそうなんですけど、周りのみんなはお利口さんで下手なことは言わないんです。でも私は逆に生意気だったり必死な感じを周りの大人の方はいいと気に入ってくださって、私の良さを引き出そうとしてくれていました。

 そのおかげで下手に自分を作らないでやって来れたので、そこは本当に感謝しています。

©橋本篤/文藝春秋

ーーお話を聞いているとハングリー精神の塊ですね。実際、そのころの吉野さんの写真って笑顔がほぼなくて、生意気な顔ばかりをされていますよね。

吉野 そうなんですよ。笑顔って嬉しい状態で出るものなのに「この衣装がすごく着たくないのに着させられてたり、そういう状態でなんで笑えるの」って思っていて。逆にそれを篠山さんや他のカメラマンの方は、もっとそこを出そうっていう。どんどん口が尖っていっちゃうみたいな(笑)。

 あの時代は社会も変化のときだったと思うんです。女の子が自己主張し始め、すごくエネルギッシュな時代の始まりが見えたときで。私自身、本当はすぐ大人になりたいのに、歳は1年ずつしか取れないというもどかしい気持ちもありました。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。