堀内 ただね、端役をやったら、全部差し替えられてるんですよ。ある作品でアナウンサーの役をやらせてもらって、嬉しくて親戚を集めて放送日に見てたら、全然違う人の声が流れてくるんです。親戚は「渋い声が出るもんだね」と僕がやってると勘違いしたままで、本当のことを言い出せない。クレジットを見るとそのアナウンサーは別のベテラン声優に変わってました(笑)。
他にもまかせてもらった端役は差し替えばっかり。そういう経験から僕の声優人生は始まってるんですよ。
テクニックで芝居をしてもダメ
──そうした状況でも、声優デビューした1983年にはレギュラーの役を掴んでいます。『アンドロメロス』、『サイコアーマー ゴーバリアン』、『超攻速ガルビオン』と途切れることなく出演しています。
堀内 新劇出身の声優は生っぽいしゃべりを感情を込めてリアルに演じられるじゃないですか。でも僕はDJやレポーター出身だから歯切れの良さが出ちゃって、違うんですよね。芝居の色がない芝居だったから、それが逆にハマったのかもしれない。オーディションに通ることが多かった。
──新鮮に感じてもらえた。
堀内 でもそこからは地獄ですよ。レギュラー役だと端役のように差し替えられないから、やり遂げないといけない。監督には怒鳴られっぱなしだし、フィルムの時代だから失敗したらそれだけテープが山積みになる。それを指して「お前がちゃんとできなかった分だ」って言われてしまいます。
『超攻速ガルビオン』のヘンリー・マクミランは収録で高笑いができなかったんです。居残りしてもだめ。たてかべに事務所に連れて行かれて、特訓しましたよ。「お前は太平洋をイカダで漂流している……やっと島を見つけた……さあ笑え! 喜べ!」って言われたんだけど、そんなシチュエーションで笑えないでしょ(笑)。でもずっと特訓に付き合ってくれて本当に優しい方でした。
──やめてしまいたくなる瞬間もあったのでは。
堀内 学生時代はずっと野球をしていたから、怒鳴られるのは全然平気でした。怒られるけどみんな言葉に愛情があるんですよ。そうするうちに、テクニックで芝居をしようとするからだめなんだ、役にどっぷり浸かって役になりきることが大切なんだと気づいていきました。
──役になりきるのは、感覚的には難しそうです。