堀内 「こういう見た目のキャラクターだからこんな喋り方をするだろう」とキャラクターを表面的に捉えていたのを見透かされていたんでしょうね。キャラクターがどういう人間で、何を考え、彼ならどうするか、じっくり考えてやるようになってから変わりました。
端役だとキャラクターの設定やプロフィールもないから、自分で作る。やっぱり人から指摘してもらうのは大切ですね。若い声優やスタッフからも指摘がもらえるように、話しかけやすい人間でいたい。今でも実際にそうしてもらえるからありがたいです。
──とてもフランクな雰囲気は実際お会いして感じます。
堀内 世の中を及第点で渡っている人は多いです。それも磨けば光るかもしれない。たてかべにそうしてもらったから、僕もそうありたいです。
──声優として生きる上で、たてかべさんの遺伝子を強く受け継いでいる。
堀内 『超攻速ガルビオン』でつきっきりで特訓してもらった時も「笑え!」と言われても全然笑えないんです。逆に、あまりにたてかべが優しいから泣けてくるんです。そうすると「泣くんじゃない、笑うんだ!」と言われてしまう。そのギャップが自分を成長させる糧になっていきました。
「お前のだめなところは極めようとしないところだ」
──DJやレポーターを続けていたとしても、堀内さんならすごく活躍していたと思います。でも声優を続けた。
堀内 DJもレポーターもそうだけど、ある程度は自分の力で何とかできたけれど、これ(声優)だけは何ともならなかった。差し替えの連続に、怒られてばかりで、これを何とかしなきゃと思ったら、時間がかかったんですね。40年経ってもこの声の芝居の答えは出てないです。
──磨き続けて気づいたら40年。
堀内 中学生の頃の僕は、静岡県で野球が一番うまかったと思います。ただ、顧問からは「お前のだめなところは極めようとしないところだ」と言われていました。ある程度までうまくなると、気が移っちゃう。でもね、今でも怖いですよ。それが僕を声優に繋ぎとめているのかもしれない。
──怖い?
堀内 『英国王のスピーチ』でコリン・ファースが演じるジョージ6世の吹替をやった時は、収録前日はちゃんとやれるかわからなくて、眠れませんでしたよ。
──堀内さんのようなベテランでも怖い?
堀内 長年やってても怖いですよ。音響監督に「今の演技と真逆でやってみましょう」と言われることもあって、それもまた新鮮な気持ちにさせてくれます。アニメと実写作品ではナレーションの勝手も違う。すると、また新しいチャレンジがあるわけです。
──新たな試練が尽きない。
堀内 企業用ナレーションも、専門の映像監督がいるでしょう。クライアントにご指名をいただいて僕にまかせてもらっても、監督からすれば「堀内賢雄って誰? この人はちゃんとできるの?」となるんです。
──(笑)。