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堀内 普段はアナウンサーと一緒に仕事をしている監督が、僕のナレーションを聞いて、「ちょっと違う」とやり直しにかかる。どうすればアナウンサーのようなしゃべりになるのか、またクリアすべき試練が生まれる。

声優事務所を立ち上げた理由

──自ら声優事務所を立ち上げたのは、新しいことを始めてみたい気持ちもあったから?

堀内 社長になったのは、気が移ったのではなく、声優として頑張ろうとしている役者を引き上げて、一緒にやりたくなったから。この子たちががんばってくれるなら、僕はもう役者じゃなくてもいいかもって考えることもあります。役者仲間にも「社長なんてやったら役者の依頼がなくなるよ」と何度も言われました。でも、今でもこうして声優の依頼をたくさんいただけるから、その期待にも応えていきたいですね。

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──40年の声優人生で、2002年にケンユウオフィスを設立しているので、半分は社長でもある。

堀内 もともとぷろだくしょんバオバブは所属20年で辞める約束だったんです。次はどうしようかと考えていた時、声優の古田信幸に声をかけてもらって声優のワークショップを開催したんです。そこにいたのが、今うちの戦力になっている役者達で、みんなプロになりたくて悩んでいた子達です。

──それが今やすばらしい戦力に。

堀内 あの時は、この子たちはこの先どこに行けばいいんだろうかと考えちゃって。それでケンユウオフィスを立ち上げたんです。僕自身も、そうやって人に拾ってもらったことで声優人生が始まったから。門戸を広げてあげれば、必ず僕と同じようにチャンスがあるはず。気づいたら昔のたてかべみたいな役回りをしてました。

©佐藤亘/文藝春秋 

──ちなみに、何か問題が起きたら社長として相手の前に出られるよう、謝罪用にスーツとネクタイを常に鞄に入れているとか……?

堀内 もう持ってないですね(笑)。事務所を立ち上げた頃はスタッフも不慣れでミスも多かったから持ってたけど、今はみんな頼れる戦力ですから。