「ある若手の監督に『なんで僕に頼んだの?』と聞いたら、『巨匠とやると疲れちゃうから賢雄さんに……』って返されたんですよ」
声優人生40年……競争激しい業界で、還暦を超えた今も活躍を続ける声優の堀内賢雄さん。インタビューを通じてわかった、堀内さんの仕事が途切れない理由とは? 後編では「ブラピ公認声優」と呼ばれた経緯から、若かりし頃の失敗や、人生哲学について教えてもらった。(全2回の2回目/前編を読む)
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「ブラピ公認」と呼ばれるようになるまで
──堀内さんといえばブラッド・ピットの吹替声優としても有名です。2022年の映画『ブレット・トレイン』では本人と対面も果たし「ブラピ公認」と呼ばれるようになりました。
堀内 あれ誰が言い出したんだろうね? 山ちゃん(山寺宏一)に怒られちゃうよ! 他にもブラピの吹替をしている声優はいるし。25年間、彼の吹替をやったってのは事実だけどね。ただ、ほとんどが地上波で放映されたものばかりだから、残ってないものも多いんです。公認か公認じゃないかなんて気にしないです。でもブラピに会えたのは僕にとってすごく大きかったです。
──初めて対面してどうでしたか。
堀内 まさにあれがハリウッド・スターなんだね。明るくて気さくで根っから“陽”な人間。しかもただの明るい人間ではなく、芝居が大好き。はたから見れば「よくこんな役を引き受けたな」って役もやっているし。一方で“陰”の部分も持ち合わせてる。
──直に会ったことで堀内さんに変化はありました?
堀内 元々、どの映画のどの役柄でも、ブラピは二枚目で、少しだけ色気がにじみ出ている俳優です。配給会社や音響監督とも話す中で「そういう感じだね」と役を作っていってます。映画『バビロン』の芝居を見ると、また一段とかっこいいおじさんになっていますよね。年齢も経験も重ねて魅力が増していますね。ますますブラピの吹替を頑張ろうという気持ちになりました。
──吹替声優としての堀内さんを表す役柄はたくさんありますが、『フルハウス』のジェシー役のジョン・ステイモスは外せないかなと。
堀内 当時のNHKに出てくる役者は新劇の人ばかりだった。いわゆる文学座出身の役者ですね。そうじゃない方向で探しているとNHKのプロデューサーから言われました。「アメリカ本家のカラッとした明るさを表現できるのは賢雄みたいな役者」と、任せていただきました。雰囲気が重たくなりそうな要素を無くしたかったんでしょうね。
──重たくなる?