──堀内さんのように業界トップを走り続けてきた方が「巨匠になりたくない」と考えているのは、すごくいいなって思いました。もちろん巨匠がいるのもいいし、巨匠じゃない大ベテランがいるのもまたいいですね。
堀内 ある若手の監督に「なんで僕に頼んだの?」と聞いたら、「巨匠とやると疲れちゃうから賢雄さんに……」って返されたんですよ。「おい、こら! 正直すぎだろう!」って(笑)。
──それは若手監督の気持ちがわかります(笑)。
新たな試練は“老い”
堀内 一生それでいたいね。この人としゃべりにくい、演技させにくいって思われたら嫌です。「賢雄さんやってよ」くらいの気軽さで声をかけてほしいです。そういう姿勢もあってか、色々なセリフをしゃべらせてもらっていますね。でも最近だと、老いのせいで「さ行」と「ら行」の発声が弱くなってきた気がします。それとカタカナを読むのが大変になってきました。
──次の新たな試練は“老い”になった。
堀内 社長業をやる中で、背負った責任感や深みがいい具合に僕に影響を与えたのか、神格化されたキャラクターや、大人の魅力が必要な役が増えました。声が真面目すぎて悪役ができないなんて言われたこともあります。
──社長業を演技の魅力にできた。
堀内 次は“老い”をどう自分の魅力にしていくか、味にしていくかが課題ですね。老いてもふざけ度はパワーアップしてますが(笑)。
──“老い”に対抗するのではなく、味方につけるということですね。
堀内 まだ僕が若い頃に、大御所の先輩たちが「うまくしゃべれなくなる」って話してたあの姿に、僕らも近づいてきました。すごく平等だね。吹替はテンポのはやいしゃべりが多い。追いつかなくなっていく実感もあります。
やっぱりちょっと怖いけれど、ブラピに“陰”の部分があるように、僕もそういった不安とか、恐れる気持ちがちょっとだけあるのも、役者としてはいいと思うんです。“陰”だけになってしまうのはダメだけど。
──バランスが大切。
堀内 昔のように監督から怒鳴られたり、たくましさを求められたりしなくなった分、指摘され慣れていない若手もいます。僕が経験したような時代であるべきではないと思いますが、バランスをとりつつ心を強く持っていってもらいたいなって思いますね。なんだか精神論になっちゃったね。でもやっぱりみんなで一緒にやっていきたいですから(笑)。