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 ちなみに着替えのパジャマもワケアリ人妻ライターからプレゼントされたものだし、病室の冷蔵庫にはワケアリにして黒髪の乙女でもある女性編集者から贈られた「高級温州みかんゼリー」が冷やされていたのだ。吐き気に襲われて食欲がなくなった時でも、このゼリーなら食べられるではありませんか!

 なんだかワケアリ女性にモテている自慢話になってしまった。申し訳ない。

 点滴開始から1時間。時計の針は正午を回った。いまのところ吐き気も抜け毛も手のしびれもない。

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点滴台を連れて病院地下のコンビニに行った際にエレベーター内で撮影(筆者撮影)

 すると驚いたことに、お昼の病院食の配膳が始まったのだ。

 メニューは麦飯にポークカレー、生野菜サラダと牛乳寒天。

 そして、さらに驚いたことに、このとき僕はお腹が減っていたのだ。

 腕から抗がん剤を投与しながら、僕はカレーライスを食べた。

 よもや抗がん剤と一緒にカレーライスや牛乳寒天を摂取するとは考えてもみなかったのだが、結局残さずにいただきました。美味しゅうございました。

 さすがに食べたら吐き気が来るかと身構えていたのだが、その気配もないまま午後1時過ぎ、点滴は終了した。

「化学療法ってこんなものなんですか」

 点滴が終った後も体調に変化はない。やることもないので、またパソコンを持って「サロン」に行き、普通に2時間ほど原稿仕事をした。

 夕方病室に戻ると、同室の先輩患者は他の病室に移ったらしく、「4人部屋のシングルユース」となっていた。

 夜、小路医師が様子を見に来てくれた。

「いかがですか」
「まったく変化がありません」
「それはよかった」
「化学療法ってこんなものなんですか」
「はい、こんなものなんです」

 もちろん、副作用の出方は個人差がある。どんなに用心しても苦しむ人はいる。僕も半年前に飲んでいた経口の抗がん剤には苦しめられた。

 それだけに今回は拍子抜けだった。