卓抜した人間力で日本最大の新宗教団体を築き上げた稀代の指導者・池田大作は、いかに組織を統率し、拡大させたのか。
ここでは、専門誌『宗教問題』編集長・小川寛大氏の新刊『池田大作と創価学会』(文春新書)を一部抜粋して紹介する。カリスマ亡きあと、さまよえる創価学会の現在地とは?(全2回の2回目/最初から読む)
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創価学会に限らないが、実は日本の新宗教団体には、「立ち上げから間もないころは世間の無理解などもあって迫害も受けるだろうが、信者のなかに2世信者の割合が増えてくれば、組織は安定してまとまる」といった考えがかつて広く存在していた。どういうことかというと、信者家庭に生まれた2世を、キリスト教の幼児洗礼よろしく生後間もないころから入信させ、まだ頭の柔らかい子供のうちから教団の教義などの情報をシャワーのように浴びせていくことで、教義に対する知識が深く、また信仰上の情熱も非常にあつい、完璧かつ理想的な信者ができあがるというのである。
2世信者の囲い込み
こうした完成された教団エリートを育てるため、日本の新宗教団体は自分たちの学校を熱心に設立していく。天理教の天理大学、立正佼成会の佼成学園高校、パーフェクトリバティー教団(PL教団)のPL学園高校などが、その代表例である。創価学会もまた1971年に創価大学を、池田大作を創立者として設立している。また、具体的な学校組織を持たなくとも、例えば世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は原理研究会、生長の家は生長の家学生会全国総連合といった、一般の大学に進学した2世信者らを囲い込んでまとめる学生組織の設立、運営に注力した。
だが、結果としてはその目論見はもろくも崩れ去った。2022年7月、旧統一教会の信者家庭に育った奈良県在住の男が、元首相・安倍晋三を手製の銃で殺害した事件を契機に、世間で「宗教2世問題」が広く認知されたのだ。この男は、母親が旧統一教会に過剰な献金をするなどして家庭が崩壊したことから、教団を恨み、安倍が教団と近い存在だと思い込んだ末に事件を起こすに至ったと、一般に報道されている。無論、このような事件まで起こす例は極端としか言いようがない。しかし、単に何かの新宗教を信じる家庭に生まれたから、その子供は熱心な信者になるだろうといった考えは、実際にはかなり虫のいい希望的観測だったことを示した事件ではあった。