人気ラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」の15周年記念イベントが2月18日に東京ドームで開催され、配信やライブビューイングを含め約16万人動員という異例の規模での成功を収めた。
彼らの「喋り」の才能を見出し、放送開始当初からフリートークの壁打ち役を務めてきたのが放送作家の藤井青銅さんだ。
私たちが「面白いトーク」をするためにはどうすればいいのか? 伊集院光、オードリーの若林正恭らが通ってきた、“トークをつくるための苦難”とは? 藤井さんの著書『トークの教室:「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(河出新書)より、一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)
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フリートークがうまくできない3つの理由
劇場では受けている芸人さんでも、ラジオでのフリートークがうまくできない理由はいくつかあります。
(1)劇場にいるお客さんは芸人のファン。基本、あなたのことを知っている。が、ラジオ・テレビでトークを聞いてもらう相手は、あなたのことを知らないと思った方がいい。そういう人に向けて、どんな話題を選ぶか?
(2)お金を払って劇場の椅子に座っている人は、トークがあまり面白くなくても席を立って出ていくことは、まずない。が、ラジオ・テレビでは簡単にスイッチを切ることができる。スイッチを切らせないためにはどういう話し方をすればいいのか?
(3)劇場で目の前のお客さんの反応を前提にすると、トークはある程度アドリブで時間が持つ。コンビの相方や他の芸人がいれば混ぜっ返してもくれる。が、多くの場合ラジオ・テレビでは目の前にお客さんはいない。そして自分1人だ。トークのネタを用意していないともたない。
…というような違いを説明することもありました。
とくに、この(3)。ふだんライブで笑いをとっていて、自分の喋りに自信がある人ほど「フリートークだから、自由なトークなんだろ? 内容なんか用意しなくても、オレはいつもアドリブでできる」と思うようです。そこに芸人としての美学を持っている人もいるでしょう。しかしたいていの場合、番組ではうまくいかない。
私たち素人だと、そんな恐ろしいことは考えません。「ここで少しお話をお願いします」なんて言われたら、そりゃ事前に準備します。
「フリートーク」というのは和製英語のようですが、この「フリー」という言葉は大変魅力的です。自由、勝手気まま、当意即妙、融通無碍、アドリブ……。
ドラマや漫画では、たまたまふらっと通りかかった登場人物が見事な技を見せるというカッコいいシーンがあります。剛速球を投げてみたり、すごいシュートを決めてみたり、あるいは素晴らしいテクニックでピアノを弾いたり、単純にケンカが強かったり……。