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「伊集院光さんも同じことを言ってたよ」ラジオイベントに16万人が熱狂…オードリー若林正恭の才能を見出した人物が語る「面白いトーク」の定義とは?

『トークの教室:「面白いトーク」はどのように生まれるのか』より #1

2024/03/02
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「フリートーク」という言葉のイメージは、ちょっとそれに似たところがあるのではないでしょうか。なにも準備してないのにさらっと面白いトークをすれば、それはもちろんカッコいい。

 けれどドラマでも漫画でも、そのカッコいい登場人物は、実はこれまで厳しい訓練を続けていた…なんて過去が明かされます。それはそうでしょう。なんの準備もしてないのに高度な技を披露できるわけがありません。

なにも準備せずに喋ることがフリーではない

 芸人さんでなくても、一般に自分は喋りがうまいと思っている人ほど、「フリートーク」の「フリー」という言葉に引きずられるケースがあります。なにも準備せずに喋ることがフリーではない。ある程度の準備をしているからフリーに(自由な感じで)喋れるのです。では、その準備はどうすればいいのか?

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トークの教室:「面白いトーク」はどのように生まれるのか』(藤井青銅/河出新書)

 もう一つ「エピソードトーク」という言い方もあります。「エピソード」と言われると、なんとなく物語性のある話のような気がしませんか? 映画『スターウォーズ』は「エピソード」「エピソード2」とシリーズでやっていますしね。

 エピソードトークとは、ドラマチックで、ある程度ボリュームがある出来事の話…というイメージでしょうか。たとえば「どこかに出かけたら、とんでもない目にあった」とか「貧乏時代に、意外な人に助けられたことがある」とか「初デートの時に、すごく恥ずかしい失敗談がある」とか。

 トークがうまいタレントさんは、そういう(たぐ)いの話をよくします。聞いているこっちとしては、「すごいなあ。この人いろいろな経験をしてるなあ」と感心し、ひるがえって「自分はごく普通の人間だ。とくにドラマチックな人生を送ってきたわけではないから、面白いエピソードなんかないよなあ」と思ったりもします。

 しかし、人生で苦労をしたから、変わった環境で育ったから、どこか変わった場所に出かけたから、珍しい誰かに会ったからといって、面白いエピソードが生まれるとは限らない。いや、実はエピソードはあるのですが、本人がそれに気づいていないだけというケースもあります。

無名だった頃のオードリー若林のトーク

『フリートーカー・ジャック!』(編集部注:藤井さんの発案で始まった、数組の若手芸人たちがフリートークを披露する場として設けられたラジオ番組)の時、まずは、まだまったく無名だったオードリーの若林さんが一人でやってきました。

 のちに有名になる、相方・春日さんのアパート「むつみ荘」でやった「小声トーク」ライブの話がとてもユニークなので、「それ、面白いトークになるよ」と言ったのを憶えています。

オードリーの若林正恭 ©文藝春秋

 それから何度も来てもらい、いろいろな種類のフリートークをやってもらいました。そのほとんどはもう忘れてしまいましたが、実は今でも私がよく憶えているのは「トークにならなかった話」です。