国内の臨床研究では胃切除で合併症を減らせたという結果が
そもそも、がんの手術は開腹であれ、腹腔鏡であれ、ロボット手術であれ、なにより「根治性(長期の生存率が高いこと)」と「安全性(手術関連死亡率や合併症率が低いこと)」が重要です。もちろん傷が小さいことや回復が早いこと、手術を行いやすいことも大切ですが、本当に他の手術と比べて根治性や安全性に優れているか(少なくとも劣らないか)を長期にわたって検証する必要があるのです。
国内の臨床研究では、胃切除に関しては腹腔鏡手術よりロボット手術のほうが合併症を減らせたという結果が出たそうです(日経メディカル「適用拡大でダヴィンチは外科手術に革命を起こすか」2018年3月17日付=記事の閲覧には無料登録が必要です)。
ただ、これはもしかすると、腹腔鏡手術にも十分習熟した外科医が慎重に行ったからこそ出せたデータなのかもしれません。腹腔鏡手術が普及する過程でもありましたが、闇雲に広がっていくと悲劇的な事故が起こらないとも限りません。それを防ぐためにも、各学会が主導して厳しい技術認定医制度を設けたり、厳格なガイドラインを作成したりして、厚労省と医学界が慎重に普及を進めていくことを望みます。
「最先端の技術」=「優れている」という幻想を持たないで
また、患者側も「最先端の技術」=「優れている」という幻想を持たないようにしてください。どんな医療技術や新しい薬も、実際に多くの人に使われてはじめて問題点や副作用が顕在化して、どうすれば安全に使えるかわかってくるものなのです。それには、数年、十数年の時間がかかります。
医師に勧められたからといってすぐに決めるのではなく、執刀医自身のロボット手術の経験数やそのメリット・デメリット、万が一の時の対応なども確かめてください。そして、ロボット手術以外の選択肢(腹腔鏡や胸腔鏡手術、開腹手術など)のメリット・デメリットなども聞いたうえで、納得して手術を受けるようにしてください。
これからロボット手術の装置はさらに改善され、日本製の装置なども登場してくるでしょう。より大きなメリットをもたらす技術に進歩させていくためにも、医師側と患者側双方が冷静に評価を見極め、大切に育てていくことが肝心だと思います。