みなさんは、「ロボット手術」ってご存知でしたか? 知らない人は「まるで近未来の映画みたいな話」と驚くかもしれません。しかし、すでに国内外のたくさんの病院で実用化され、利用されている技術です。

4月から保険適用範囲が一気に広がったロボット手術

 これまで、泌尿器科で行う前立腺がんの全摘術と腎がんの部分切除術だけに保険が適用され、それ以外は原則的に患者側の自己負担となっていました。ところが、この4月から膀胱がん、食道がん、胃がん、直腸がん、子宮体がん、肺がんなど、一気に保険適用の範囲が広がりました。そのため医療界では大きな話題となっています。

 保険適用になると患者側の経済的負担が減るので、がんの手術を受けるときにロボット手術を勧められるケースが増えるかもしれません。ですからそれに備えて、ぜひロボット手術のことを少しでも頭に入れておいてください。

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 さて、この手術はどんなものなのでしょうか。ロボットと言っても、機械が自動的に手術をしてくれるわけではありません。執刀医の動きを忠実に再現する3~4本のロボットアームに、細長い内視鏡カメラと超音波メスや鉗子などの手術器具を装着し、患者の体内に挿入します。執刀医は別のユニット(操作台)に座って、レンズを通してモニターに映った体内の3D(立体)画像を見ながら、指先や足で遠隔操作する仕組みになっています。日本では主に「ダヴィンチ」という米国製の機械が使われています。

スペインの病院にて手術ロボット「ダヴィンチ」によるがん手術風景 ©getty

腹腔鏡や胸腔鏡より操作しやすい

 専門的には「ロボット支援下内視鏡手術」などと呼ばれていますが、実際にしていることは、細長い内視鏡カメラや手術器具をお腹や胸に挿入して、体内の画像を見ながら操作する腹腔鏡や胸腔鏡などの内視鏡手術と変わりません。

 ただ、腹腔鏡や胸腔鏡は患者の腹壁や胸壁を支点にして動かすため、通常とは異なる方向の動きに慣れなければいけません。それにテレビと同じように平面のモニターを見ながら行うので、慣れないと奥行きがわかりにくいという難点があります。

 これに対してロボット手術は、執刀医が操作した通りに動いてくれるうえ、体内の様子は奥行きをとらえやすい立体画像で見ることができるので、腹腔鏡や胸腔鏡に比べて断然操作しやすいと言われています。さらに、手術器具が曲がる自由度が大きいので、普通なら角度的に難しい深い場所でも操作しやすいとか、手ぶれ補正機能がついているのでより繊細な動きが可能になるといった利点があります。