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壊れた家具、倒壊した塀の瓦礫、道路の被害…「人手が足りないのは傍目から見ても分かった」能登半島地震ボランティア60日後の“現在地”

2024/03/01

genre : ニュース, 社会

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 しかし、今回はボランティアがバスに乗って現地入りするため、被災した住宅までの移動手段がなくなってしまう。そうなると、各市町村に配置されたハイエースなどのワンボックスで人を運搬するしか術がなくなり、被災した住宅に行ける人数が限られてしまう。

「たくさんのボランティアを受け入れたいのは山々ですが、スタッフの少なさと人を運搬する車や軽トラックの少なさもあって、現段階ではボランティアの人数を増やすのは難しいのが現状です」(志賀町のボランティアセンターのスタッフ)

 一部で宿泊ボランティアの受け入れが始まった報道もあったものの、多くのボランティアが被災地で活動できるのはもう少し先になりそうである。しかし、時間が経ち過ぎてしまうと、今度は被災地への思いが薄れていき、ボランティアに行きたい人が少なくなってしまう。

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 今後は行政が旗振り役となって、観光とボランティアをセットにした旅行施策や、ボランティアが現地入りする際の交通費の割引サービスなど、何かしらの積極策を行う必要がありそうだ。

「言葉を詰まらせながら話す姿に、胸が熱くなった」

 すべての参加者のボランティア活動が終了し、16時に金沢市内行きのバスに乗り込んだ。出発直前、ボランティアセンターの事務局長がお礼を言うために、車内に備え付けられているマイクを握った。

「本日はボランティアに来ていただき、本当にありがとうございました。皆様のおかげで、志賀町も復興の一歩が踏み出せそうです」

 時折、言葉を詰まらせながら話すその姿に、胸が熱くなった。事務局長が最後に深々と頭を下げると、バスの中が万雷の拍手に包まれた。

 雨が振る中、ボランティアセンターのスタッフが駐車場まで見送りに来てくれた。バスが見えなくなるまで手を振り続ける光景を見て、機会があれば、またボランティアに参加したいという思いが強くなった。

志賀町のボランティアセンターにて

 自分が住む千葉県から金沢市までは、新幹線などの往復の交通費だけで3万円かかる。前日の宿泊費や食事代も入れれば、4万円近い出費となる。

「そんなお金があれば、寄付すればいいじゃないか」

 そういう人もいるが、ボランティアの活動には、お金には変えられない「思い」と、人の手がなければ絶対にできない「支援」がある。

 みなさんもボランティアに参加して、その「思い」と「支援」を体感してもらえれば、嬉しい限りである。

壊れた家具、倒壊した塀の瓦礫、道路の被害…「人手が足りないのは傍目から見ても分かった」能登半島地震ボランティア60日後の“現在地”

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