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「10代でトンネル工事の仕事に就き、全国の現場を転々としました。31歳の時、福島県で独立。トンネル工事の現場では、掘削作業を進めていると、湧き水の層にぶち当たることがあり、これが難敵でした。そうした経験がもとになっています」(同前)

西田さんの掘った井戸。地元住民が飾りつけをしたという ©️文藝春秋

「数メートル地下には水があるのに…」

 2011年3月11日、東日本大震災が発生。福島県で暮らしていた西田さんも被災し、家族を山形県に避難させた。

「災害の時、給水車の前に何人も人が並ぶのを見ていて、その数メートル地下には水があるのに、と思っていました。自分には幸い、簡単な道具で水脈を見つけ出す技術と知識がある。それを伝えようと思って、4年前からワークショップに参加しました」(同前)

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 西田さんは「西田方式水脈探し」のノウハウを教えつつ、全国100か所以上で、地面から水を湧かせてきたという。珠洲市でも、若いボランティアたちと協力し、依頼のあった場所へ赴き、手製のパイプハンマーを大地に打ち込んだ。

井戸掘り現場

 掘り当てた水脈を飲み水とするには水質調査が必要だが、用途には事欠かない。災害時、命に直結する飲料水は最も重要な支援物資としてただちに補給されるものの、長引く断水によって「生活用水」を欠く暮らしは、想像を絶するストレスとなる。

「トイレは仮設のものが各避難所に設置されて、お風呂は自衛隊が設営してくれましたが、次に困るのが洗濯でした。入浴ができるようになっても、着ているものが汚れたままだと気分的につらいので」(珠洲市の避難所の女性)