地震直後の火災によって甚大な被害を受けた輪島市。輪島朝市通りに近い「輪島工房長屋」の一角には、正午になると長蛇の列ができる。地元のミシュラン一つ星フレンチ「ラトリエ・ドゥ・ノト」シェフの池端隼也(いけはた・としや)さん(44)が主催する炊き出しが振舞われるためだ。震災数日後から、被災した地域の住民や飲食店関係者らが手を取り合い、温かく野菜たっぷりのメニューを無料で被災者に提供してきた。
その並びに、白いキッチンカーが登場したのは、1月21日のことだ。段ボールに黒のマジックで手書きされた看板には、こう綴られている。
〈復興ごはん 炊き出しの支援として大切に使わせていただきます 1杯500円から〉
被災地のために働く人たちにも炊き出しを
被災地には、復興支援関係者が数多く出入りし、それぞれの職務にあたっている。彼らには「炊き出しは被災者のための食事」という思いがある。現地の被災者が勧めても、まず受け取ろうとしない。被災地のために働く人たちにも気兼ねなく炊き出しを食べてもらうには、どうしたらいいのか――。
炊き出し班のそんな思いやりから始まったのが、このキッチンカーの「復興ごはん」だった。これなら被災者以外の者も、炊き出し資金に貢献しつつ、堂々と温かく栄養のある食事を摂ることができる。誰もが笑顔になれる発案だ。