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「被害を想像して、暗澹たる気持ちになりました…」地図のスペシャリストは、能登半島地震をどう見たのか

2024/02/02

genre : ニュース, 社会

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 1月の初旬、地図の出版社である昭文社の人と話す機会があった。

 そのとき能登半島地震の話題になったのだが、地図に詳しい人は有事の際に私たちと見ている地図がちがうことを知った。また、もっと早く救助に行けたのではないかと尋ねると、能登半島の地理的な難しさも教えてくれた。

 思えば、今回の能登半島の地震について様々な意見が飛び交っている一因に、一般の人はあまり「能登半島を知らない」ということが挙げられるように思う。そこで本稿では、地図の専門家に能登半島とはどういうところか、災害時にはどういった地図を見ればいいのかなど、「地震と地図」について話を聞いた。

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 教えてくださったのは、地図出版社の老舗である株式会社昭文社ホールディングスの飯塚新真さんと竹内渉さんである。

飯塚新真さん(写真左)と竹内渉さん(写真右)

『分県地図』から見えてくる能登半島の地形的な特徴

――今日は、石川県の地図を持ってきていただきましたが、まず能登というところの地形的な特徴を教えていただけますか?

竹内 これは『分県地図』という各都道府県を1枚の紙に表した地図ですが、これを広げて見ると、改めて能登半島の大きさがわかるかと思います。石川県の最大の都市である金沢市から、今回地震の被害の大きかった半島の先端である珠洲市までは、直線距離でおよそ110キロあります。ちなみに東京から100キロの地点といえば、栃木県の宇都宮市や静岡県の沼津市です。

――あまり意識したことがなかったのですが、それだけ大きな半島であると。

飯塚 そう思ったのは、我々のように日々、地図をいじっている者でも同じでした。能登半島ってどれくらいの大きさの半島かと、意外とイメージしにくいなと。そんなとき、改めて紙の地図で見てみると、わかってくることがありますよね。

飯塚 新真(いいづか にいま)
東京都生まれ。1986年、昭文社(現昭文社ホールディングス)入社。編集部都市地図課、大阪支社勤務を経て、地図編集部情報課長、SiMAPシステム部長、地図編集部長、ソリューション営業本部長等を歴任。現在は取締役(監査等委員)。

竹内 また地図を見ると、地震の被害の大きかった能登半島北部の「奥能登」と呼ばれるところが、大変「山がち」であることもわかるかと思います。この地域の森林面積は全体の約3/4を占めます。市街地は輪島と珠洲にありますが、あとの集落は海岸沿いか、あるいは山間部のわずかな平地に点在しています。

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