地図を構成する3つの要素「線、面、注記」
飯塚 今回、改めて能登半島の地図を見ると、昭和の終わりから平成、令和にかけて、ずいぶん道路が整備されたなとは感じるんです。私は、昭文社に入社して40年近く経ちますが、入社した頃に計画が本格化したのが、小矢部から輪島までを結ぶいわゆる「高速道路」の能越自動車道です。現在も全通はしていませんが、とびとびに整備が進み、輪島の近くまで来ています。やっとここまで来たかという感慨もありますが、まだ全部は行っていないんだよなと。
竹内 今の飯塚の「道を線のように捉える」考え方は地図屋らしいです。私たちは地図を大きく3つの要素に分解して作っていくんですが、それが線、面、注記です。
――地図はその3つの要素で作られると。
竹内 はい。線というのは、道路であったり鉄道であったり川であったりですね。まず、これがどこを走っているというのを原稿化していきます。面というのは、市街地の広がりであったり、山地がどこまでとか、公園がどこまでですという情報。
飯塚 行政がどこまでかというのも面情報ですね。
竹内 もうひとつの注記は文字情報です。町とか道路の名前とかですね。地図記号も注記になります。国土地理院の発行する地形図は注記情報が少ないですが、そこに注記情報をたくさん加えてわかりやすくするのが、我々、民間地図会社の仕事なんですね。
今回、報道された文字情報として、3万戸くらいが停電しているというニュースが発生当初から流れていました。過去の地震だと50万戸停電といったこともあったので、そういった文字情報だけだと、被害状況が小さく感じられてしまう。「2、3万戸なんだ、過去の例に照らせば何日かで復旧するんじゃないかな」と思える。でも面で考えると、札幌市域より大きなところが停電しているのだから、これは大変なことだぞと思える。地図を使うと面的に考えられて、実情に近い状況を把握しやすいんじゃないかな、と思いましたね。
――報道でも、テキストじゃなくて、面で見せるのもひとつの方法ですね。
竹内 この寒い季節にこれだけ広大なエリアが長期停電するならば、救援の仕方も過去の地震と変わってくるでしょう。1995年の阪神・淡路大震災のときも寒かったですが、あのときは大阪の人間が比較的早く現場に行くことができた。今回の苦労は、その比じゃないだろうなと。
写真=山元茂樹/文藝春秋