韓国で2月から、専攻医(研修医)の6割以上がストライキに入る「医療大乱」が発生している。主に研修医が働く大規模な病院で手術を延期したり、夜間救急医療の受け入れを拒否したり、あちこちで混乱が起きた。
原因は、尹錫悦政権が2月6日に発表した大学医学部定員の大幅増員政策だった。実際、韓国の地方では「医者不足」を叫ぶ声が相次いでいるほか、「ビッグ5」と呼ばれるソウルの5大病院には患者が殺到する現象が起きていた。医師の「労働環境改善」にもつながりそうだが、なぜ、韓国の医師(の卵)たちは猛反発したのか。背景には、韓国独特の「一極集中」現象があった。
尹政権は2025年度から医学部定員を、現在の3058人から5058人に増やすと発表した。これに対し、医大の学長らや大韓医師協会が「短期間での大幅増は受け入れられない」として強く反発。韓国には全国で約1万3000人の研修医がいるとされる。
尹大統領は「医療サービスの現実は悲惨」と主張
韓国保健福祉部が3月5日付で発表した報道資料によれば、4日午後8時現在、1~4年目の研修医9970人の90.1%にあたる8983人が職場を離脱している。一部は退職届も提出している。同時点で、緊急治療室の一般病床稼働率は37%、重症患者の病床稼働率は79%にそれぞれとどまっている。
特に、「ビッグ5」と呼ばれる「ソウル大」「新村セブランス」「ソウル峨山」「サムスンソウル」「ソウル聖母」の5大病院で混乱が拡大した。セブランス病院では20ある手術室のうち、約半数が稼働できなくなった。ソウル近郊の京畿道水原市にある亜洲大学病院でも、夜間担当の研修医がいなくなり、教授たちが夜間診療を担当する事態に至ったという。
これに対し、尹錫悦大統領は2月20日の閣議で「患者と国民が地域で直面している医療サービスの現実は悲惨極まりない」とし、2000人の定員増でも足りないとの認識を示した。保健福祉部によれば、全国40大学の医学部が申請した25年度の定員増希望は3401人にのぼるという。