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 人気がある診療科目は、美容整形や皮膚のシミ取り、レーシック手術など、公的医療保険が適用されない自由診療が多い。医師が自由に診療報酬の値段を決められるため、収入も増える。当然、医師の間で人気も高まる。だが、自由競争である以上、「もうけ主義に走る医師はけしからん」という批判だけでは、対策にならない。

 こうした点を考えると、「単純に医学部定員を2000人増やすだけでは問題の解決にならない」という、研修医や大韓医師協会の主張にも一理がある。増えた2000人の大多数はきっと、ソウルを含む首都圏での勤務を希望するだろうし、美容整形外科や皮膚科、眼科の専門医がさらに増える結果になる可能性が高い。韓国政府元当局者の一人は「尹政権は単純に医学部定員の2000人増という政策を打ち出すだけではなく、医師が不人気診療科目や地方にも目を向けるような政策を一緒に提案すべきだった」と語る。

韓国で改革が必要な「3問題」

 韓国では4月10日に総選挙(定数300)の投開票が行われる。これまで、与党「国民の力」の劣勢が伝えられてきたが、非常対策委員長(臨時党代表)に就任した韓東勲元法相への期待感や、最大野党「共に民主党」の李在明代表による公認選びを巡る「公平ではない」という批判、第三極勢力の不人気などから、国民の力が勢いを増しつつある。政界筋の一人は「これまで、国民の力は100議席にも届かないかと思っていたが、もしかすると130くらいまで議席を伸ばす可能性も出てきた」と語る。

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 そのなかで、尹政権が打ち出した医療改革は、今のところ追い風になっている。韓国の世論調査会社リアルメーターが2月26日に発表した世論調査結果によれば、尹大統領の支持率は41.9%で、昨年6月以来、約8カ月ぶりに4割台を回復した。国民の7割以上が支持する医療改革案が追い風の一つになったとも言える。

 政府元当局者の一人は、「韓国では従来、医療、教育、労使が改革の必要な3問題と言われてきた。かなり単純で性急な医療改革政策を打った背景には、近づく総選挙に向けて支持を増やしたいという思惑もあったのかもしれない」と語った。