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「2人で手塚治虫先生に漫画を見てもらいに行った」『あさきゆめみし』『日出処の天子』両作者の高校時代から続く“意外な関係”

山岸凉子(漫画家)――クローズアップ

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「源氏物語」を漫画化した『あさきゆめみし』と、聖徳太子(厩戸王子)の若かりし頃を描いた『日出処の天子』。共に40年以上にわたり読まれ続ける名作だ。両作にスポットを当てた「『あさきゆめみし』×『日出処の天子』展―大和和紀・山岸凉子 札幌同期二人展―」が開催される。

 タイトル通り、『あさきゆめみし』の作者・大和和紀さんと『日出処の天子』の作者・山岸凉子さんは北海道出身で同学年。デビュー前の高校生時代から交流があった。

「高校2年生の時、お昼休みに下敷きにこっそり漫画を描いていたら、前の席に座っていた子が『私の友だちにもこういう絵を描く子がいるのよ』と紹介してくれたのが大和さんでした。私は母に言われて小学校卒業以降、漫画を読むのをやめていたんです。でも、妹が買ってきた雑誌に里中満智子さんのデビュー作が載っていて、同学年の人がデビューしていることに衝撃を受けて。大和さんに出会った時は漫画を描き始めてまだ1カ月ほどだったので、大和さんの絵があまりに美しくて驚きました。少女漫画とはこう描くんだとわからせてくれたのが大和さんでしたね。さっぽろ雪まつりのイベントにいらっしゃった手塚治虫先生に、2人で漫画を見てもらいに行ったこともありました」

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 1980年連載開始の『日出処の天子』は、不思議な力を持つ厩戸王子と、彼が思いを寄せる蘇我毛人の関係を軸にして政治や陰謀の世界を描き、多くのファンを生んだ。

「当時はBLなんて言葉もなくて、編集長から『1万円札の聖徳太子に、少女漫画で何ができるんだ!』と言われました(笑)。でも、自分はこの世界がすごく好きだし、女性読者には絶対に受けるはずと、連載をOKしてもらいました」

 北海道にマンガ文化の拠点となるマンガミュージアムの設立を目指す「北海道マンガミュージアム構想」。大和さんはその発起人代表、山岸さんは副代表を務めており、本展もこの構想を実現するための活動の一環だという。初日には大和さんと山岸さんによるトークイベントも開催される(イベントチケットは完売)。

「北海道ってたくさん漫画家を輩出しているんですよ。普段は人前に出ることもないのでトークなんて上手くできるかわからないのですが、実現のためと思って頑張ります」

 本展では、両作の原画128点を展示。繊細な線で描かれる美しい原画を間近で見られる貴重な機会となる。また、ポスターやアクリルキーホルダー、高精彩複製原画等のグッズも会場で販売される。

「実は、今回初めて『あさきゆめみし』を読みました。当時は他の人の作品を読むと影響を受けてしまいそうで、大和さんの作品も読んでいなかったんです。今その絵を見て、あまりの美しさにのけぞっております。大和さんから、私は『日出処の天子』を全巻読んだんだから、あなたも絶対に全巻読むように、と言われています(笑)」

やまぎしりょうこ/北海道生まれ。1969年『りぼんコミック』に掲載された「レフトアンドライト」でデビュー。83年『日出処の天子』で第7回講談社漫画賞、2007年『テレプシコーラ/舞姫』で第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。その他の代表作に『アラベスク』『天人唐草』『レベレーション(啓示)』等。

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『あさきゆめみし』×『日出処の天子』展 ―大和和紀・山岸凉子 札幌同期二人展―
3月9日~24日 札幌・東1丁目劇場にて/入場チケットは、ローソンチケットまたは会場で販売
https://www.city.sapporo.jp/kikaku/shomu/popculture/asakiyumemisi-hiidurutokoro.html

「2人で手塚治虫先生に漫画を見てもらいに行った」『あさきゆめみし』『日出処の天子』両作者の高校時代から続く“意外な関係”

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