今シーズンから新天地のロサンゼルス・ドジャースでプレーする大谷翔平(29)。MLB史上最高額となる10年総額7億ドル(日本円で約1015億円)の“規格外契約”に世界中が度肝を抜かれた。いったい、この契約の水面下では、どんな交渉が行われていたのだろうか?

 ここでは、エンゼルスの番記者、ジェフ・フレッチャー氏の新著『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』(訳=タカ大丸、徳間書店)から一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

ドジャースの大谷翔平 ©時事通信社

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大谷の市場価値

 大谷翔平が2021年に空前絶後の大活躍を見せたときから、FAの資格を得る2023年終わりの狂騒曲につながる種は、植え付けられていたといえる。

 2021年まで、大谷はメジャーでも大した実績を残しておらず、FAうんぬんも大きな懸案になることはなかった。

 あの衝撃的なシーズンでさえも、終わってみればエンゼルスはいつもどおり負け越していた。大谷はちょうどそのころ、

「勝つことこそ、僕にとっていちばん大切なこと」

 という忘れられないコメントを残したのだ。

 あの日以来、エンゼルスと大谷の間で、1つの課題がずっと付きまとうことになった。エンゼルスは残留するよう大谷を説得しなければならないわけだが、そのためには、たんにお金を積む以上の何かが必要だった。

 つまり、勝たなければならないということだ。

 2023年シーズン終了の時点で、エンゼルスはこの課題において落第した。2021年の負け越しシーズンが2022年の惨敗につながり、さらに、2023年も負け続けた。球界関係者の大部分が、大谷の退団を確信していた。

 そして、あの時点で次に関心事となるのは、彼がどこの球団へ行き、年俸がいくらになるのかだった。この両方を、野球ファンとメディア関係者のどちらも同じように話題にしていた。

 推測はここ何年間かずっと続いていたが、2023年シーズンがついに終わると、予測される金額はさらに大きくなっていた。