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大谷はエンゼルスにどれほどの利益を生み出していたのか?

 大谷は世界的なスーパースターで、彼がチームに加わるだけでチケットの売り上げが激増するのは確実だった。そして、大谷が加われば、日本からさらなるスポンサー企業が増加するのも間違いなかった。

 エンゼルスタジアムは日本企業の広告で埋め尽くされており、すべて日本向けに中継される試合の視聴者と、大谷を見るために球場へ足を運ぶ日本人観戦客向けだった。ギフトショップに行けば、大谷の名前と顔が入ったアイテムが満載だった。

 エンゼルスはこれまで、大谷のおかげでどれほどの増収があったのか公表したことはなかったが、だいたい年間1000万ドルから2000万ドル(約14億5000万円から約29億円)と見られていた。

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エンゼルス時代の大谷翔平 ©文藝春秋

「市場は選手の価値そのものを気にしなくなっている」

 それらのもろもろの要素を加味して大谷の正規な市場価格を出すことが、これから彼を獲得しようとするチームに託された。しかし、ある経営陣は「正規な市場価格」という概念自体が的外れだと指摘した。

「見ればわかるように、もはや、市場は選手の価値そのものを気にしなくなっている」サンフランシスコ・ジャイアンツの野球運営責任者であるファルハン・ザイディが、GM会議で漏らした言葉である。

「今や市場そのものが命を吹き込まれている。それぞれ違うチームが、ある選手に対してさまざまな評価をするわけだが、最終的には入札額を書いた札をバケツに放り込むしかない。そこで、とくにほしいフリーエージェント選手を最優先にして価格を決めていくわけだ。だが、多くのチームがその選手に興味を抱いている。そして、選手が選べるチームは1つだけだ。どうしてもほしい選手を獲れなかったからといって、簡単に次の残り95%の誰かに移るというわけにはいかないんだ。選手と契約できるか、できないかのどちらかしかない」