フレイザーは、それでも“本物”であることが大切だったと海外のインタビューで答えている。彼とヴィルヌーヴが導きだした答えは、ヴァーチャルではなく、太陽光のもと自然なカメラポジションでその場面を撮影することだった。
そうして可能なかぎりの素材をリアルに映すことで、渦巻く砂塵のなかポールが砂虫を乗りこなす迫力のシーンが完成した。
ひときわ鮮烈なオースティン・バトラー
たとえSF作品であっても、本作ではリアルであることが探求されている。撮影も、演技も。
前作は主人公ポールの成長物語だったが、本作はフレメンのあいだで長く語り継がれてきた救世主伝説を基調に、救世主となる運命を引き受け、聖戦に挑むポールの姿を描きだす。
ポールに扮したティモシー・シャラメを始め、レベッカ・ファーガソン、ハビエル・バルデム、フローレンス・ピュー、クリストファー・ウォーケン…そうそうたる俳優陣の演技は堂々として重厚。オースティン・バトラーがポールの好敵手となるハルコンネン家の次期男爵、フェイド=ラウサを残忍に演じ、ひときわ鮮烈だ。
舞台はいまから約8000年後の宇宙帝国。にもかかわらず、太陽を中心に据えた雄大な物語には、荘厳な古典劇を観るかのような充足感がある。
STORY
夢に現れた砂漠の民チャニに導かれ、惑星アラキスを生き延びたアトレイデス家の後継者ポール。砂漠の民のあいだでは、惑星の外からやって来た預言者リサーン・アル=ガイブが彼らを救うという救世主伝説が語り継がれており、ポールこそその救世主だと信奉されるが――。
STAFF & CAST
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ/出演:ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン/2024年/アメリカ・カナダ/配給:ワーナー・ブラザース映画/3月15日公開