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「遺体はほぼバラバラ」人間が“ヒグマの保存食”にされてしまう痛ましい事件も…「熊は人を食べない」定説が崩壊した理由

『アーバン熊の脅威』より #2

genre : ライフ, 社会

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 登山中や山奥での釣りでヒグマと遭遇してしまったのは不運としか言いようがないが、安全なはずの住宅地で襲われるケースもある。

 2023年10月、富山市南部の江本地区で頭やアゴを深く切り裂かれた七十代女性の遺体が見つかった。当日夜、女性の夫が「夕方から妻の姿が見当たらない」と警察に届け出て、署員が捜索したところ、敷地内で血を流して倒れている女性を発見した。

 死因は首や胸の骨折に伴う出血性ショックで、顔の損傷が激しく、身元の特定に時間を要したという。敷地内の畑には大きな熊の足跡があり、約1週間前には2.5キロほど離れた地域で女性が熊に襲われて重傷を負う事件も起きていた。

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顔面の中心を「かじり取られた」ケースも…

 運よく生き残れたとしても、熊の攻撃は非常に悪質でダメージが大きくなりがちだ。ある医療論文によると、熊の襲撃で受けた被害者の外傷はほとんどが顔面に集中しており、眼球を失ったり、鼻を全欠損したりといったケースが目立つ。熊は攻撃時に立位になると110~130センチほどの高さになることが多く、人間の頭頸部が爪や牙による攻撃の標的になりやすいとみられている。

 報道番組熊の襲撃を受けた被害者のレントゲン写真が公開され、頭蓋骨の中央部がグチャグチャになっていることにSNS上で騒然となったこともあった。

 ある形成外科医が明かしたところによると、熊によって顔面の中心を「かじり取られた」という事例もあり、現場に駆けつけた救急隊員が「被害者の眉間から両下まぶた、頰、鼻、上口唇がひとまとまりになったもの」を路上で発見し、病院まで持ち帰ってきたことがあったという。

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