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「遺体はほぼバラバラ」人間が“ヒグマの保存食”にされてしまう痛ましい事件も…「熊は人を食べない」定説が崩壊した理由

『アーバン熊の脅威』より #2

genre : ライフ, 社会

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 なぜ昔よりも熊が「人間を食べる」事件が増えているのか……。痛ましい事件が起きる理由を、宝島社による新刊『アーバン熊の脅威』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

人間が保存食のように扱われてしまった事件も…なぜ昔よりも熊は人を食べるようになってしまったのか? 写真はイメージ ©getty

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「熊は人間を襲って食べる」

 熊による襲撃は凄惨なものが多く、2023年の被害でとりわけ世の中を震撼させたのが、11月に北海道の大千軒岳へ登山に出かけた22歳の男子大学生が遺体で発見された事件だった。

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 激しく損傷した大学生の遺体の近くにヒグマの死骸があり、登山中だった大学生とは別の消防士の3人グループが襲撃されたが、その際になかの一人がナイフで熊の顔や首などを刺し、撃退していた。ヒグマはその傷が原因で死亡したとみられる。

 大学生の遺体は損傷が激しすぎるために死因の特定に難航したが、警察がヒグマの胃の内容物を調べたところ、大学生のDNA型と一致したことで、ヒグマに襲われて死亡していたことが確定した。

 通常の熊被害では、警察やマスコミの「配慮」によって、具体的な体の損傷状況などは伏せられることが多い。しかし、この一件では死因の特定に熊の胃の内容物の鑑定が用いられ、注目度の高い事件だったことから多くの大手メディアで報じられたため、世間の人々は「熊は人間を襲って食べる」ということを改めて認識させられた。

 2023年5月には、北海道幌加内町の朱鞠内湖で釣りをしていた男性がヒグマに襲われて死亡。遺体は「ほぼバラバラ」といえるほどすさまじく損傷しており、警察官らの捜索によって付近で頭部が発見され、さらに覆うように被せられた草木の下から胴体とみられる遺体の一部が見つかった。

 ヒグマは食べ物を埋めるなどして隠す習性があり、「保存食」として隠していたのではないかとみられる。男性を襲ったとみられるヒグマは現場付近で射殺されたが、胃袋には約9キロの内容物があり、その中には肉片や骨片があったことがわかっている。

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