内田也哉子 小泉今日子 今だから語れる 親、きょうだい、パートナーのこと。人生に訪れる 出会いと別れのこと。
約30年前に知り合い、ずっと近いところにいながらじっくり話す機会はなかったという2人。相次いで親を亡くした内田也哉子さんが、連載「BLANK PAGE」で取材を申し込んだのをきっかけに、言葉を交わすようになった。今年1月、「BLANK PAGE」書籍化を機にあらためて対面した2人が話したのは――。
『週刊文春WOMAN2024年春号』から対談記事を一部抜粋し、掲載します。
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母・樹木希林に「なぜ父と別れないの?」と問いただした
内田 私はいわゆる「優しいお母さん」らしいことをしてもらった記憶がありません。私の両親は私が生まれる前から別居していて、父はたまにしか現れず、現れたときは必ず暴れる。でも母はそんな父のことをすごく敬う。
思春期になるとそれがなんだか嘘っぽく思えてきた。怖いから母に反抗まではできなかったけれど、「なぜあんな人とずっと別れないでいるの?」と問いただすことはしたんです。そのとき、対等のひとりの人間として私に応えたのだと思います。「どんなに破天荒でもひとかけら純なものがあるから」と。
母は若い頃の1度目の結婚は相手が穏やかな人で、結婚生活も穏やかだった。ところがその日常を5年間続けたら、自分のメラメラと燃えたぎるマグマのようなものをぶつけたくなって、幸せな夫婦関係を解消してしまった。
その後、ブラックホールのような虚無感に襲われたけれど、内田裕也という嵐が向こうからやって来たときに、このカオスのような男を自分の人生に取り込んだら、虚無感に苛まれずに済むのではないかと思った。つまり、母は父を利用したというんです。だから始めたものは続けていこうと、自分に誓ったんでしょうね。
小泉 きっと途中で気づいたんでしょう。自分の罪だと感じたとき、これは貫かなければいけない。手を離したらもっといけないものが残ると思ったのではないでしょうか。
内田 そうですね。私は母に甘えることはできなかったけど、自分の生き方について逃げずに話してくれたということが、私と母との唯一の繋がりだったと思います。