時効なのか時効でないのか判断がつかないが、私は実はこの前日、発熱でダウンしていた。日本から持参した風邪薬を飲んで、ホテルの部屋で10時間以上は寝て、起きた時は体中が汗でびっしょりで、熱は引いていた。いや、正式には体温計を持っていなかったため、発熱していたか熱が引いたかも定かではない。それでも、体感で38度以上はあった。
後に聞いた話では、米メディア2人と懇親会を兼ねて寿司を食べに行った私を含め日本メディア全員が体調を崩していたという。一方で、米メディア2人の体調は問題なかったと聞いた。慣れない環境、慣れない食事で免疫力が落ちていたのかもしれない。コロナ禍前だが、この時はそれぞれが体調を崩すほどの目まぐるしい忙しさだった。
本拠地での「初試合初打席でメジャー初本塁打」と“洗礼”
大谷の勢いは止まらない。本拠地エンゼルスタジアムでのデビュー戦となった4月3日のインディアンス(現ガーディアンズ)戦に「8番・DH」で出場し、初回に1号3ランを放った。本拠地エンゼルスタジアムでの初試合初打席でメジャー初本塁打。初マルチとなる3安打で、打点も初となった。
同点の初回、第1打席だった。2死満塁から暴投で勝ち越した直後、2年連続2桁勝利を挙げている右腕ジョシュ・トムリン(ブレーブスFA)から3ランを右中間に叩き込んだ。2ー2から6球目のカーブ。3球目に空振りしたが、暴投になっていた球種だ。「ワイルドピッチで点も入って楽になった。そのおかげでカーブがちょっと浮いてくれたのかなと思う」。投手心理を読み切った、二刀流の大谷ならではの一撃だった。
記念すべきメジャー初アーチを放った後、待っていたのは「メジャーの洗礼」だった。ベンチに戻った大谷は誰からも見向きもされず、両手を広げてアピールする。無視が続き、たまらずイアン・キンズラーに抱きつくと、ナインが一斉に集結。手荒い祝福に最高の笑顔だ。
「何かよく分からなかった。ちょっとたって気づいた。うれしかった」。選手を祝福する「サイレント・トリートメント」と呼ばれる儀式で、主砲のトラウトとプホルスの発案。スタンディングオベーションにはヘルメットを掲げて応え「最高でした」と喜んだ。