若葉 単純に、セリフという役者の道具のひとつを封じられるという意味では難しかったですね。でも、それより難しかったのは、今作が感情だけでは動けなかったこと。これまで僕は、わりと感情の動くままに演じることが多かったのですが、今作ではそれをやったらネタバレになってしまうという危険性があって難しかったです。
今作では観客には最初、登場人物の相関や復讐の目的、なぜループを繰り返すのかが、伏せられています。ループ回数を重ねるごとに少しずつ明らかになっていくのですが、僕や伊勢谷さんが感情のままに動くと、2回目くらいのループで全部バレてしまう。だからどこまで取り入れて、どれを排除するかの判断は最後まで苦しみました。
ただ一方で、伊勢谷さんが僕と同じように計算して演技をしたらこぢんまりした映画になってしまうと思ったので、伊勢谷さんには「何でも自由にやっちゃってください」と、たきつけてました(笑)。
──伊勢谷さんはどんな方でしたか?
若葉 伊勢谷さんとは、はじめてご一緒させていただいたのですが、小学校6年生の男の子みたいでしたね(笑)。もし仮に、撮影中に珍しい蝶が飛んできたとしたら、撮影を放り出して追いかけてしまう自由奔放な人で。こういう生き方があるんだ、と衝撃でした。
想像していたより尖った映画に
──映画後半では、岩森と溝口の関係性に変化が生まれます。若葉さんと伊勢谷さんの距離感も変わりましたか?
若葉 伊勢谷さんは、活動休止前はテレビドラマや大作映画に数多く出演されていたので、ある意味「わかりやすい」演技を求められることが多かったそうです。だから、セリフもテンポもすごく速かった。
そこで、僕が一回リズムを落として、あえてずらしてみたら、それがふたりの関係性を暗示しているようで、しっくりきたんです。