高血糖より低血糖のほうが危険
高齢者で、認知症の悪化、意識消失、めまいなどを起こしている人は、低血糖になっている可能性がある。低血糖は糖尿病薬などの治療を受けている人が、食事の量が少なかったり、急性の病気にかかったときに起こす恐れがあるが、実は高血糖より、低血糖のほうが危険なのだ。灰本クリニック院長の灰本元医師が話す。
「重症低血糖を起こすと、認知症や心筋梗塞のリスクが高くなることがわかっています。本人も低血糖が原因だと気づきにくいので、放置されがちです。とくに夜中に倒れた、寝汗がひどい、朝頭痛がするといった症状があったら低血糖を疑って医師に相談してください」
かつては、血糖値は厳しく下げたほうがいいとされたが、現在は低血糖防止のために、高齢者には血糖値を緩やかに下げる治療が推奨されるようになった。
「糖尿病の人は、薬で血圧やコレステロール値をしっかり下げると、心筋梗塞や脳卒中の死亡リスクがかなり減ることがわかっています。ですから、低血糖のリスクも考えると、血糖値を厳しく下げるよりも、むしろ血圧やコレステロール値の管理が大切です」(同前)
なお、糖尿病の予防や改善には「運動」がおすすめだ。灰本医師によると、現代人に糖尿病が増えたのは、糖質摂取が増えただけでなく、生活で体を動かさなくなったことも大きいという。それに、運動をすれば認知症の予防にもなる。浴風会病院精神科の須貝佑一医師が解説する。
「有酸素運動が認知症予防になるというエビデンスが国内外にあるので、ウォーキングなどを生活習慣に採り入れるといいでしょう。一方、脳トレになると言われる日記や写経、ドリルなどは、本人が好きでない限り、あまり意味がありません。認知症予防には自発性と持続性が大切だからです。それよりも、囲碁、将棋、マージャンなど、対戦相手と刺激し合いながら、楽しめるものをやったほうがいいと思います」
また、認知症予防にはテレビよりラジオのほうがいい。耳からの情報だけで話を理解するには、想像力や注意力を働かせる必要があるからだ。
「テレビは長時間ぼーっと見てしまうので、認知症予防にはあまり役に立ちません。それよりも、連続ラジオ小説のような番組を、場面を想像しながら聴くのがおすすめです」(同前)
(初出『週刊文春』2017年1月5・12日号)