「台湾有事」の危機や北朝鮮のミサイル発射など、さまざまな懸念が尽きない東アジア情勢。トランプ政権でCIAの長官や国務長官を歴任した「将来の大統領候補」マイク・ポンぺオ氏はどのように現状を見るか。前国家安全保障局長・北村滋氏が話を訊いた。

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トランプ政権でCIA長官と国務長官を務めた

 トランプ政権でCIA長官(2017年1月〜2018年4月)と国務長官(2018年4月〜2021年1月)を務めたマイク・ポンペオ氏(60)。

 トランプ政権下での「米国の対中政策の大転換」を中枢で担い、「史上初の米朝首脳会談」実現のため、北朝鮮の金正恩委員長とも直接交渉を行なった経歴をもち、東アジアの地政学的情勢に最も精通する一人だ。

 2024年の大統領選への出馬は見送ったものの、トランプ氏勝利の場合、政権入りの可能性も取り沙汰されている。『回顧録』(未邦訳、原題Never Give an Inch : Fighting for the America I Love 一歩も譲らない──愛する米国のための戦い)も話題となり、「将来の大統領候補の一人」としても注目されている。

 今回、仕事上のカウンターパートだった前国家安全保障局長の北村滋氏を相手に、中国、台湾、北朝鮮など、現在の東アジア情勢について存分に語った。

マイク・ポンペオ氏 ©文藝春秋

 ――あなたは、過去の講演で米国の対中政策に度々言及されてきました。この50年間の中国への「関与政策」をどう評価しますか。

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 ポンペオ 1972年のニクソン大統領の電撃的な訪中とその後の米中国交正常化は、キッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が中心となって構想したものでした。

 当時は冷戦下で、ソ連への対抗策として中ソ関係に楔を打ち込もうとしたのです。

 米国が「関与」することで、中国を共産主義の独裁国家から自由で開放的な国家に変貌させる狙いもありました。

 こうした戦略にしたがって、米国を始めとする西側諸国は、半世紀にわたり、中国との経済関係を深め、WTOなどへの加盟を支援してきたのです。

 さらにソ連と東欧の共産主義体制が崩壊した後は、「中国でも同じ歴史が繰り返される」「経済の自由化が政治の自由化をもたらす」と期待してきました。