そう、『リッチマン、プアウーマン』と『Eye Love You』は、構造だけ見るとほぼ「男女逆転」で同じ話を描いているのである。だがこれは単純に、若きベンチャー社長とインターン大学生の恋を描いている、という点だけが似ているわけではない。

2つのドラマに通ずるもの

『Eye Love You』を傑作にした立役者といってよい、侑里と一緒に起業した仕事のパートナーの花岡(中川大志)というキャラクターがいる。

 彼は侑里のことがずっと好きだったのだが、侑里が恋愛に興味がないことを知って自らの気持ちを胸に秘めたままにしていた。テオに恋をしてこれまで見たことのないの姿を見せる侑里に戸惑いを覚えながらも、最後は彼女を受け入れ、仕事や恋愛を超えた信頼関係を築いていく。

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『Eye Love You』で主人公の同僚・花岡を演じる中川大志 ©文藝春秋

 視聴者の反応を見ていると、花岡は主人公に引けを取らない人気を集めているように思う。テオと侑里の恋愛を丁寧に描くだけでなく、花岡と侑里の「一緒に起業した仲間であり、お互いに大切だと思う感情を抱いてはいるものの、恋愛関係にはならなかった」というパートナー関係をしっかり描いたこともまた、このドラマが面白い理由なのだろう(実際、筆者もかなりの花岡ファンである)。

恋愛だけではない関係性が丁寧に描かれた

 一方、『リッチマン、プアウーマン』もまた、日向のビジネスパートナーとして、井浦新演じる朝比奈という男性が登場した。彼も『Eye Love You』の花岡のように、視聴者から高い人気を博したキャラクターだ。

2012年にフジテレビ系「月9」枠で放送された『リッチマン、プアウーマン』(FOD番組公式ページより)

 朝比奈は日向の才能に強い可能性を感じて、ともにビジネスを始めた人物。そんな彼は、普段は日向のことを「日向」と苗字で呼ぶのだが、ふたりきりの時は「徹」と下の名前で呼ぶ。朝比奈と日向との間には、ほかの誰も入り込めない、強いつながりが存在していた。しかし真琴との出会いによって変化していく日向に、朝比奈は憎しみを向けるようになる……。

 そんなふうに『リッチマン、プアウーマン』では、日向と真琴という男女の恋愛関係だけでなく、日向と朝比奈というパートナーの関係も丁寧に描かれた。彼らの重く複雑な関係は、ドラマの大きな見どころだった。

 つまり『Eye Love You』も『リッチマン、プアウーマン』も、「社長とインターン生の恋愛」だけでなく「ビジネスパートナー同士の強い結びつき」が描かれているため支持を集めたドラマである、と見ることができる。