今冬ドラマ一番の話題作、宮藤官九郎脚本×阿部サダヲ主演の『不適切にもほどがある!』(TBS系)、通称『ふてほど』。プロデューサーは『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』などクドカンの名作をてがけた磯山晶。
本作は、1986年に生きる中学校の体育教師で野球部顧問の小川市郎(阿部サダヲ、未見の方もいるため、以降は役者の名前で記載)が、偶然タイムマシンのバスに乗り込んで2024年にタイムスリップしてしまい、昭和と令和を行き来しながら、価値観の違いに驚きながらも昭和スタイルで令和の世の中を生き始める……という物語だ。
放送後には絶賛記事がネット上に溢れ、SNSでも中高年を中心に盛り上がる一方で、回を重ねるごとに女性や若い世代からの批判や疑問の声も増えてきている。
折り返しにあたる6話まで進んだ現時点の率直な感想は、「良くない方の予想外が起きている」というもの。
小ネタをちりばめた「昭和あるある」の懐かしさを楽しむだけのドラマじゃなかったことは予想通り。
また、阿部サダヲが単純にタイムスリップするのではなく昭和と令和を行き来するというのも多くの視聴者が予想した通り。
まるで昭和のオヤジ世代が自分で自分を称賛するかのよう
では、何が予想外だったのか。
それは「クドカンが単純な対立構造を描くわけがない」という多くのファンの信頼を裏切っていることだ。6話時点までは「昭和vs.令和」の単純な対立構造が続いているのだが、主人公は昭和スタイルを貫いて全く変化せず、逆に令和の人々がそれに感化されるオチに帰結している。
「不適切」とはいうものの、本作の阿部サダヲは「忘れ去られた、時代に取り残された、光の当たらない過去の人」じゃない。過激な物言いが重宝されてテレビ局の専属カウンセラーになり、本人が「俺は不適切だから」と言っても、周囲は「不適切くらいがちょうど良いんだよ」ともてはやす。まるで昭和のオヤジ世代が自分で自分を称賛するかのようで、見ていて恥ずかしい。
実際、SNSでもまっすぐ絶賛しているのは中高年の男性に見えるアカウントが多い。それがクドカンの本意ではないとしても、彼らの「昭和は良かった。令和は息苦しい」という感覚にクドカンがお墨付きを与えてしまっているのだ。面白いのは、繊細さを欠いたこのドラマに “珍客”――三原じゅん子や近藤真彦が反応し、盛り上がるような大衆的盛り上がりが生まれていること。